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第2分科会報告書

作成・発信部署:企画部 企画経営課

公開日:2007年4月10日 最終更新日:2009年3月27日

三鷹市まちづくり研究所第2分科会報告書「三鷹市自治基本条例について」

報告にあたって

1 第2分科会設置の経緯

 自治基本条例は、本格的な分権時代を迎え、「自治体の憲法」として市政運営の基本理念や基本方針などを基本条例として定めるもので、平成13年度から施行された北海道ニセコ町の「まちづくり基本条例」を先駆けとして、その後、多くの自治体で検討が進められている。
 三鷹市は、基本構想・第3次基本計画の策定において、市民の提言なども踏まえて自治基本条例の制定を計画に掲げた。その後、平成14年10月に、三鷹市まちづくり研究所に「自治基本条例の検討」を研究テーマとして第2分科会が設置され、学識研究員3名、公募を含めた市民研究員8名を構成メンバーとして研究が始められた。第2分科会では、これまで12回の研究会を開催し、約1年間をかけて自治基本条例に定める内容について集中的に検討してきたものである。

2 市民に開かれた分科会運営を目指して

 第2分科会は、「三鷹市の憲法」ともなる自治基本条例を検討するという性質から、より多くの市民に検討状況を知らせる必要があるとの運営方針に基づき、まちづくり研究所としては初めて、事前に開催日程を市の広報やホームページで公表し、広く市民への傍聴を呼びかけることとした。そのため、毎回、熱心な市民がノートを取りながら分科会の議論に耳を傾けており、また学生や市外からの傍聴者も訪れている。
 また、分科会の検討内容についても、毎回、議事録要旨を作成し、これも市の審議会や検討機関としては初めてとなるが、発言者名入りの議事録を各回終了後に市のホームページで公開しており、自治基本条例を検討している他の自治体からも議事内容に関する照会が寄せられている。
 さらに審議過程においても、希望する市民が研究員の前で発表する機会を第3回目の分科会で設け、「三鷹市の自治基本条例に期待するもの」とのテーマで、自ら用意した資料に基づき、それぞれの市民が描く三鷹市の自治基本条例のイメージについての提言が述べられた。

3 研究員の共有する認識「三鷹らしい」自治基本条例とは

 条例の検討にあたり本分科会の研究員が共有した認識は、三鷹市の自治基本条例の各章を通底して基本理念となるものは、これまでも三鷹市が市政運営の理念として掲げ、かつ実践してきた「市民参加・市民との協働によるまちづくり」であり、それを条例の「基盤」に据えることによって「三鷹らしい」自治基本条例を創ることができ、さらには将来に向けても、「市民と行政のパートナーシップを基調としたまちづくり」を推進することができるとの考えであった。
 さらに、三鷹市はコミュニティ施策や市民参加の取り組み以外にも、情報公開制度やオンブズマン制度の導入、また自治体経営面においても、外部委託や公設民営方式などの行政改革に取り組み、「効率的で開かれた自治体」を目指した施策を「先駆的」に実施してきた。しかし、これらの「先駆的施策」の中には、条例や規則等を根拠とするなど安定的な制度・仕組みとして確立したものもあるが、一方で特段の根拠規程等はなく、通常の三鷹市の事業方法・執行体制として、その実施が進められているものもある。
 そこで情報公開やオンブズマン等の条例等を根拠とする施策については、各施策の個別条例等の理念や目的等を自治基本条例にも規定することにより、市政における当該施策の位置付けや重要性をより明確にすることができる。
 また、パブリックコメント制度など既に取り組みを行っているが、実施規程等が整備されていない施策については、自治基本条例に規定することによって安定的な制度・仕組みとされ、今後、必要に応じて条例や規則等の整備が進められるとともに、継続的な推進体制の確立が図られることを期待するものである。
 さらに自治基本条例の規定内容として提言するものには、住民投票制度など、現在、市ではその取り組みが行われていないが、今後、検討すべき重要な課題・制度として問題提起をしているもの、あるいは市の目指すべき理念や方向を掲げることにより、一層の取り組みの強化や改革の必要性を提起した将来課題をも含んでいるところである。
 なお、議会の権能に係る部分も検討しているが、市長と市議会との調整を前提に問題提起をしているものであり、必要な調整を含めた適切な対応を望むものである。

4 自治基本条例の内容の表記について

 次頁のIIで記載する自治基本条例の内容については、想定した条例の章立てにそって、検討項目ごとに本分科会の意見を集約したものである。しかし本分科会の検討においては、ひとつの検討項目に関する異なった見解が研究員から出された場合は、それに関する率直かつ真摯な議論は行いながらも、最終的に完全な意見の一致までも図ろうとはしなかった。
 むしろ議論の結果として最後まで見解が分かれた場合は、たとえ少数の意見であっても、それを本報告に掲載することによって、今後、市民や議会に委ねる自治基本条例に関する検討や議論を、より多様で豊かなものにすることができると考える次第である。
 具体的にIIの表記としては、枠内の内容は概ね共通の了解を得られたものを記しており、見解が分かれたものは欄外に「意見」として付記しているところである。

自治基本条例の内容について

前文

(1) 前文に規定する内容について

  • 市民自治と市民の信託に基づく三鷹市政の実現、日本国憲法に基づく世界平和への寄与、基本的人権の尊重、協働とコミュニティに根ざした自治の推進、また、市民と行政のパートナーシップによる市民参加を基調とした市民自治の推進などについて規定する。
  • 三鷹の緑豊かで落ち着いた住環境や、下水道の完備やコミュニティづくりの歴史など、まちの個性・歴史・文化を尊重する内容を規定する。
  • 前文は、「ですます」調で書くことが望ましい。

(意見)

  • 「高環境・高福祉」など、基本構想に掲げる政策目標についても、前文に規定する。
  • 前文は、「である」調で書くことが望ましい。

第1章 総則

(1) 自治基本条例の目的について

  • 日本国憲法の定める地方自治の本旨を実現し、三鷹市の自治の基本理念、市民自治によるまちづくりの基本原則等を明らかにすることを目的として、自治基本条例を制定する。

(2) 自治基本条例の最高規範性及び改廃手続について

  • 自治基本条例は、「三鷹市の憲法」というべき最高規範であり、他の条例の制定及び法令・条例の解釈・運用にあたっては自治基本条例の趣旨を尊重し、自治基本条例との整合性を図らなければならない。

(意見)

  • 条例の最高規範性を担保するために、条例は施行後2年以内に住民投票を行って確定するとともに、以後の改廃は議会の議決に加えて、住民投票による。
  • 市長、議員及び職員はその職に就くにあたり、日本国憲法とともに三鷹市自治基本条例を遵守して職務にあたることを宣誓する。
  • 改廃の手続きについては、住民投票の実施を要件とするという意見や、柔軟に改正できる方が良いなどの意見があり、一定の合意には至らなかった。

第2章 市民と市民自治

(1) 市民の権利等について

((注)三鷹市では、従前から基本計画等で「市民」の用語を、「市内に在住、在勤、在学及び市内で活動する者」として広義に用いており、本報告においても基本的には同様の扱いとしている。)

  • 市民は、市政の主権者であり、市政は、市民自治と市民の信託に基づいて成立する。
  • 市民は法令・条例に従って納税する義務を負うとともに、市民総体で納めた税の総額に見合う適正な行政サービスを受け、これを請求する権利を有する。
  • 市民は、市政に参加する権利を有する。ただし、市政に参加しないことによって不利益を受けることはない。
  • 市民は、世界的に認識され、実現が求められている人間の尊厳、自由、平等及び持続可能な発展を希求する権利を有する。
  • 市民は、地域におけるコミュニティ活動、まちづくり活動及びその他の自主的な活動を推進するために、主体的に自治組織を創設し、自由に自立した活動を営むことができる。

(意見)

  • 満18 歳以上で市内に3月以上住所を有する市民は、市政における選挙権・被選挙権を有する(ただし法令に別段の定めがある場合は、当分の間その定めによる)。
  • 「男女共同参画」、「環境権」及び「知る権利」について、個別の人権や市民の有する権利として規定する。

(2) 住民投票について

  • 住民投票の請求資格及び投票資格は、市内在住の満18歳以上の日本国籍を有する者及び永住外国人で引き続き3月以上住所を有する者とする。
  • 市長は、廃置分合や境界変更といった市の基盤に係わる重要事項については必ず住民投票に諮ることとし、その他は住民の請求があったときのみ住民投票を実施する。
  • また、投票結果は市長や議会の決定を拘束するものではないが、市長や議会は投票結果を尊重しなければならない。

(意見)

  • 条例の制定改廃の直接請求について議会が修正又は否決した場合、原案と修正案に関する住民投票を行い、投票結果によって再度議会に付議する。
  • 市長は、市民を納税者とする税目を新設する場合、又は一定額を超える起債を行う場合には住民投票に諮らなければならない。
  • 住民投票は、投票資格者の30分の1以上の署名があったときに行う。

第3章 議会(議事機関)

(1) 議会の役割、責務等について

  • 議会は、市民の信託を受けた、二元代表制の一翼を担う議決機関として、市民の意思を反映させた立法・調査活動を行い、市民の立場から行政執行を監視・評価する。
  • 議会は、立法過程の公開と分かりやすい議会運営を推進するとともに、夜間及び休日議会の開催やCATVによる中継の実施など市民が参加しやすい議会運営に努める。
  • 議会は、市民への積極的な情報提供・情報公開を行うとともに、本会議、委員会及び事務局の審議・調査活動において、市民及び学識者等の参加・協力を得て立法・調査活動を行うことができる。
  • 議会は、独自の立法活動を推進するため、政策提言と政策立案の強化に努めるとともに、調査の実施など議会の持つ権限を最大限に活用する。
  • 議員は、有権者から直接信託を受けた者として、積極的に自由討議を活用し、議論の活性化に努める。

(意見)

  • 議会は、採択した陳情・請願の実現に努め、不採択の場合は請願の代表者にその理由を説明する。

第4章 執行機関

(1) 市長の責務等について

  • 市長選挙に立候補する者は、選挙公約として掲げる政策・公約について、その目標値、達成時期(目標期間)及び財源等の方針と合わせて具体的に提示するように努める。
  • 市長に選出された者は、選挙公約の実現を図るとともに、それが実現できない(しない)場合は、その理由を説明するように努める。
  • 市長は、毎年、市政運営の方針を明確にし、それを市民及び議会に説明しなければならない。
  • 市長は、市民に信託された代表者として、市民の意見・要望を的確にくみ上げて、公正・透明で効率的な市政運営を通じて自治の充実に努めなければならない。
  • 市長は、最少の経費で最大の効果を上げるよう努めなければならない。
  • 市長は、地方自治法で定められている助役、収入役等に加えて、副市長、参与等の市長の業務を補佐し、専門的な助言を行う補佐職を条例に基づき設置し、任用することができる。

(意見)

  • 市長は、3期12 年の任期内に職務をまっとうするよう努める。
  • 現職市長と新人の候補者ではマニフェストづくりの条件で差があり、また候補者のマニフェストのすべてを信任して投票したものではない場合もあるので、自治基本条例に定めることは疑問である。

(2) 情報公開・個人情報の保護、パブリックコメント、説明責任について

  • 市の保有する情報は市民の共有財産であり、市は、市民の「知る権利」の実効的保障に努めるとともに、積極的な情報提供・情報公開に努めなければならない。
  • 市は、個人情報の開示請求権の保障と個人情報の保護に努めなければならない。
  • 市は、重要な条例・計画等の策定にあたり、素案の段階で情報公開を行い、市民が意見を表明できる機会を保障する。
  • 市は、政策決定の理由を説明する責任を有するとともに、計画や事業の実施において掲げた目標について、達成の有無及び達成状況等の結果を市民に説明する責任を有する。

(3) 苦情処理、オンブズマン制度、審議会等について

  • 市長は、市政に関する市民の苦情に誠実、迅速に対応し解決に努めるとともに、解決に至らなかった問題に関して市民から請求があった場合には、その理由を文書で回答する。
  • 総合オンブズマンは、市民の苦情を公正かつ中立な立場で迅速に処理することとし、市民からの苦情を調査するほか、自らの発意で調査し、調査結果に基づいて市に勧告・提言その他の意見を述べる権限を有する。
  • 市長は、審議会等を設置するときは、その委員に市民からの公募を含むものとし、男女間の比率が著しく不均衡にならないよう留意する。
  • 審議会等は原則公開とする。ただし、特別な理由があるときは、審議会等が非公開を決定することができる。

(意見)

  • 審議会等の委員は、市民から公募するとともに、その比率は法令等に特別の定めのある場合を除き3分の1以上とする。

(4) 政策法務、財政状況の公表、人材育成、公務員倫理について

  • 市は、自治立法権と法令解釈権の積極的な活用を図る。
  • 市長は、健全な財政運営に努めるとともに、財政状況の公表と財務諸表の作成・公表により、市の財政状況を的確かつ分かりやすく市民に伝える。
  • 市長は、公正で有能な職員の任用に努めるとともに、適材適所の人員配置と能力・実績に応じた適正な処遇に努める。
  • 職員は、市民全体への奉仕者である自覚に立って、公正・誠実・効率的に職務を行い、自治の充実に努める。
  • 職員は、公益に反する事態を是正するため正当な公表又は通報をしたことにより、不利益な取扱いを受けない。

(5) 外郭団体等について

  • 市は、外郭団体に対して、適切な情報公開・個人情報の保護及び経営・運営の適正化が図られるよう支援・要請を行うことができる。
  • 市は、他団体へ出資又は業務の委託を行う場合は、必要な範囲で当該団体の業務や財務に関する情報の開示を求めることができ、また当該団体も、情報の開示に協力するものとする。

第5章 自治運営の基本的な仕組み

(1) 基本構想・基本計画の策定手続等、行政評価、危機管理体制について

  • 市は、基本構想・基本計画を策定し、総合的かつ計画的な行政運営を行うとともに、個別計画は、基本構想・基本計画との整合・調整を図る。
  • 市は、基本構想・基本計画及びその他の重要な個別計画の策定にあたっては、市民の多様な参加を保障するとともに、市民の検討に必要なデータ集・資料集等の作成を行う。
  • 市長及び市民等は、計画や施策の策定・実施等において、市民参加の実効性を確保し協働のまちづくりを推進するため、市長及び市民等の双方の責務と役割などを定めた「パートナーシップ協定」を締結することができる。
  • 市は、策定した計画の進捗状況や成果の評価・公表を行うとともに、適切な計画の見直しを行う。
  • 市は、効果的かつ効率的な行政運営を図るため、行政評価を実施し、評価結果の施策への速やかな反映に努めるとともに、行政評価に関する情報を分かりやすく市民に公表する。
  • 市は、市民の身体・生命及び財産の安全性の向上に努めるとともに、市民、事業者、関係機関と協力・連携及び相互支援によって、緊急時に備える総合的かつ機動的な危機管理の体制の確立を図る。

(2) コミュニティ、協働の推進について

  • 市は、コミュニティを醸成する場として、コミュニティ・センターを設置する。コミュニティ・センターは、当該地域の市民の自由と責任に基づき、地域における公共的団体(住民協議会)が管理運営する。
  • 市は、市民の自発的なコミュニティ活動の支援に努めるとともに、市民と連携したまちづくりを進める。
  • 市は、各地域でまちづくりに取り組む市民、NPO等の活動を支援し、市民間の交流の推進や市民への情報提供を図るために、市民協働センターを設置する。
  • 市は、市、市民、NPO、事業者等が相互に連携し、協働して公共的なサービスの提供やまちづくりの担い手となる「新しい公共」の推進を図るため、必要な支援や取り組みを行う。

(意見)

  • 「コミュニティ」や「コミュニティ活動」は、コミュニティ・センターを基盤とする活動や住民協議会の活動として特定するのではなく、地域における市民活動を広く表わすものとして用いるべきである。
  • コミュニティ・センターや市民協働センターのような特定の施設について規定することは、自治基本条例になじまないと考える。

第6章 政府間関係等

(1) 政府間関係の改革、広域的都市連携、国際交流について

  • 市は、行財政制度における国、都等との適切な政府間関係の確立に向けて、国、都等に対して制度・政策の改善に向けた取り組みを進めるとともに、関係団体や市民等と連携・協力して自治基盤の強化に努める。
  • 市は、近隣自治体等と連携・協力して、行政サービスの相互乗り入れ、共通課題への取り組み、広域的対応を図ることにより、市民サービスの向上及び効果的・効率的な行政運営を図る。
  • 市は、海外の自治体、研究機関、市民団体等との交流・協力を推進し、また市民団体等による国際交流活動への支援を通して、共通する都市問題に関する調査研究や国際平和の実現に向けた取り組みを行う。

おわりに 「三鷹らしい自治のルール」の制定に向けて

自治基本条例を創ることは、三鷹市のこれまでの歩みを振り返り、その歴史や実績の検証をしつつ、これからの三鷹市を展望することでもある。それは、一人ひとりの市民が「理想とするまち・三鷹」を描き、イメージしながら、その実現に向けて必要な自治の仕組みや「三鷹のルール」を創ることにほかならない。
自治基本条例の検討を通して、「理想のまち・三鷹」をつくるための役割を考えたとき、市民から「信託」を受けた行政や議会の役割と責務の重要性が明らかになったが、それは取りも直さず、「信託」の主体であり、協働のまちづくりや「新しい公共」の担い手でもある主権者たる市民の役割の重要性が、より鮮明になったところである。その意味でも、本報告による提案が多くの市民の関心と議論を呼び起こし、分権時代を切り開く「三鷹らしい自治のルール」の制定に寄与することを期待するとともに、今後の条例制定のプロセスにおいてもより多くの市民参加を得て、三鷹市の自治基本条例が生まれることを希望するものである。

このページの作成・発信部署

企画部 企画経営課 企画調整係
〒181-8555 東京都三鷹市野崎一丁目1番1号
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