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まちづくりシンポジウム(第3回)パネルディスカッション(3)

作成・発信部署:企画部 企画経営課

公開日:2005年4月6日 最終更新日:2009年3月31日

まちづくりシンポジウム(第3回)パネルディスカッション(2)からの続き

「教育・子育てのまち三鷹を考えるシンポジウム」

パネルディスカッション

○ 大日向氏<保育の質の確保の方法>

はい。今、全国的に行政とNPOも含めて民間団体との連携が行われ始めています。
でも、その実態をみると、地域によっては、行政は財源がないので民間にまかせれば安上がりだろうという考え方のところがあるとも聞いておりますが、これは問題ですね。そうしたスタンスが先行すると、どうしても子育て支援の質の低下は避けられない面が出てきます。
「あい・ぽーと」の場合には、むしろ、従来の行政の発想とは違う観点から区民のニーズにきめこまやかに、フットワーク軽く対応することを期待されて、やらせていただいておりまして、とてもありがたいことだと思っております。
それからもう1つ、乳幼児期の発達環境に関しては、親が、特にお母さんが自分の手で育てるべきなのか、あるいは保育園等に預けて働くことがOKなのかという議論があります。アメリカの研究ですが、赤ちゃんが生まれてからずっと、10年近く追跡した研究があります。膨大なデータを積み重ねた結果、得られた結論は極めて単純明快なのですが、子どもの成長・発達は、母親が自分の手で育てるか、保育園に預けて働きながら育てるかの形だけでは一切言えないということです。4つの条件をクリアすれば、保育園に預けて働いている家庭の子どもの発達は何の問題もなく、むしろ良好だということですが、その4つの条件とは、第1に、働いているけれども、子どものこともしっかり向き合っていこうという母親の態度。第2に、夫を始め家族や周囲の協力。第3が日中の保育の質。第4が、職場の両立支援です。この中でとりわけ大事なのが、日中の保育の質だということが報告されています。
この研究からも示唆されていることですが、発達環境をいかに保障できるかという点がとても大切です。乳幼児保育や子育て支援に民間活力を導入することは時代の流れとなっております。私も企業の参入が全面的に悪いなどと単純なことを申し上げるつもりはありません。しかし、やはり企業というのは効率性、競争原理を優先せざるを得ない面があると思います。一方、保育というのは効率性や競争原理とは相容れない面があることを忘れてはならないと思います。もっとも、財源が限られた中で、なんでもかんでも行政にやって、ということは無理な時代になっていますし、望ましいことでもないだろうと思います。むしろ、行政はここまでやる。市民もここまで頑張る。そして、ともに子どもの発達環境を守ろうという、そういう気持ちで力を合わせていくことが、これからはどこの自治体でも問われていくと思います。「子どもの今が日本の社会の未来です」、この言葉が私は好きです。財政難を理由として、子どもの育つ環境の質を低下させることにならないことを願っております。アメリカには「乳幼児教育保育にお金をかければ、将来刑務所予算を削減できる」という考え方があると聞いております。そんな単純なものではないとは思いますが、ただ発達環境はそれほど大切なもので、社会全体が本腰を入れて守るべきものだと思います。

● 参加者C<保育の質の内容>

今、大日向先生から保育の質が非常に重要だというお話があったのですが、この保育の質の中身が一番問われるのではないか。人間の脳がコンピュータのメカニズムに組み込めないのと同じくらい、保育の質というものの深さがあるのではないかと思いますが、例えば園庭の広さとか、保育室の大きさとか、施設的・構造的なもののほかに、どういったプログラムを組んで保育しているかということもあるかと思います。
私は、最終的には愛情のようなものが、いかにそこに注ぎ込めるかというところにいってしまうような気がしますが、その愛情の中身が私の中で解明されない。そういったところの保育の質について、もしお考えがありましたらお伺いしたいと思います。

○ 大日向氏<人件費に予算をかけることが重要>

先ほどご紹介したデータはアメリカの研究ですが、アメリカは保育の福祉的なバックアップが非常に乏しい国です。ですからお金のたくさんある人は、お金をたくさん払って、いわゆる良好と言われる保育環境を手に入れることができます。でも、所得の低い方々はなかなかそれが難しいです。
保育環境の質として大切なのは、1つには保育時間数です。その研究では、一日の保育時間が6時間から8時間以上を長時間保育として、問題点の1つにあげていたと思います。日本では、親の勤務時間に合わせて、どんどん保育時間が延長される傾向がありますが、やはり問題視していかなくてはならないと思います。でも、これは保育園側だけで対処できる問題ではなくて、企業がどのような働かせ方をするかということと関連して考えていかなくてはならない問題です。それから、もう1つは一人の保育士あたりの子どもの数です。これも子どもの発達段階に応じて日本が守ってきた設置基準というのがあります。専門職としての保育士の確保も大切なポイントです。子どもや家族をめぐる問題も年々、複雑化していますので、保育士さんの研修も欠かせない課題です。私は先程、親のゆとりと学びが子育てには大切だと申しましたが、同じことが保育士さん達にも言えると思います。保育士さんがゆとりをもって日々の保育にあたり、学べる機会を保障していくことが大切です。保育に必要な予算は人なのです。どなたか先程おっしゃいましたが、人件費にいかに予算をかけていけるか、なのです。建物は目にとまりやすいので自治体はお金をかけますが、人というのは見えにくいので、予算削減の対象とされてしまうきらいがあります。人材にどれだけ投資できるか、その大切さを先ほど、ご紹介したアメリカの研究は示唆していると思います。

● 金子氏<コミュニティ・スクールについて>

最後に、新しい制度としてのコミュニティ・スクールについてご質問をいただいているので、お答えしたいと思います。お二方からの質問です。「NPO法人に対して三鷹市は、コミュニティ・スクールの指定をする場合、そのNPO法人がどのような条件をクリアしているべきでしょうか」ということですが、NPO法人の話は三鷹市で学校をサポートするためのNPO法人があると聞いていますが、それは、1つのやり方として、注目すべきものです。コミュニティ・スクールについては、既存の公立の学校、ないし新設の公立学校を、市の教育委員会が「ここをコミュニティ・スクールとして指定する」ということで始まります。指定をして、住民参加の協議会を作って、校長はその協議会と一緒になってこの学校を運営することになります。NPOが学校を設置するということではありません。多分すぐには無理でしょうが、例えば不登校の子どもとか、学習障害の子どもとか、専門家や親も教育に積極的に参加しなければいけないような子ども達を想定した、少人数の学校を、例えば空き校舎を使って比較的お金をかけないで作るというようなことが将来できるかもしれない。それを、コミュニティ・スクールとして立ち上げ、運営は実質的にNPOに委託するというようなことは可能になるかもしれません。すぐにということではないでしょうが。すぐにできることと言えば、小・中一貫校を進めるということなら、小・中一貫校にふさわしい先生を学校ごとに採用することができれば、いいでしょう。そのような場合には、その学校をコミュニティ・スクールに指定するということで、これまでできなかった、ふさわしい教員を採用するということが可能になるかもしれません。
「コミュニティ・スクールが三鷹市で誕生した場合、どのような支援が期待できますか」ということですが、端的に言うと、コミュニティ・スクールに対する、特段の支援はありません。ただ文部科学省は、何かしらの補助を考えるようです。国や自治体の資金的援助は期待せず、みんなで参加をすることで、地域にいい学校を作ろうという。逆に、みなで汗をかこうというのがコミュニティ・スクールの発想です。その代わり協議会を通して自分達の意見を反映させて納得のゆく学校が作れる。教員については、住民が雇うわけではありませんが、自分で「これは」という先生をリクルートしてきて、校長に推薦するというようなことはできるようになるでしょう。
「教育NPO法人に三鷹市が校舎を準備、提供してくれる可能性はありますか」という質問についてですが、これは、どちらかというと、特区の公設民営のケースですね。コミュニティ・スクールの場合、将来的にはそういうこともあってもいいかもしれませんが、将来校舎が空いてしまったというときには、大日向さんの「あい・ぽーと」のように、NPO法人がやることにして、そこをコミュニティ・スクールとして指定するということはあってもいいかと思います。
最後の質問になりました。これは大変重要な問題ですね。第二中学校区の方からで、「小・中一貫校のモデル地区になりました。コミュニティ・スクールについては大変いいと思いますけれども、実際にやってみるといろいろと地域の参加というのは難しいのではないか。考え方の差もあるし、世代の差もあるし、やり方が違う人もいる。これをクリアしないとコミュニティ・スクールはうまくいかないのではないか。」というご質問です。これはそのとおりだと思います。ただ、学校を一緒に作ろうということで、例えば毎週土曜日などに会って、いい地域にしよう、いい学校をみんなで作ろうと、地域の人達と話し合いをしていく。共通の関心と共通の目的があることで、世代の差や、その人のバックグラウンドや経験の差などは、解消される可能性もあると思うのです。い
い地域だけにいい学校ができるのではなく、いい学校を作ろうということが、みんなの意識を高めて、みんなで協力しようとなって、いい地域ができるという方向性が大事かと思います。
今日は皆様方から大変活発なご意見をいただきました。今後とも子育て、教育に関して、我々もコミットして、懇談会に参加して行きたいと思います。皆様方との対話を通じて素晴らしい三鷹市を作ることに、少しでも協力していきたいと思っております。ありがとうございました。

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