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まちづくりシンポジウム(第1回)パネルディスカッション(1)

作成・発信部署:企画部 企画経営課

公開日:2005年4月6日 最終更新日:2009年3月31日

「三鷹市における地域ケア~地域の連携・協力による自立支援~」

  • 日時:平成16年7月17日(土)午後2時~4時
  • 会場:三鷹産業プラザ701・702会議室

出席者(敬称省略)

コーディネーター

杉澤秀博(桜美林大学大学院教授)

パネリスト

中谷陽明(日本女子大学助教授)
島野雅子(ほのぼのネット中原班)
宿利貢一(三鷹市健康福祉部高齢者支援室長)

基調講演

市川一宏(ルーテル学院大学学長)

司会

小林裕(三鷹市企画部調整担当部長)

○ 三鷹市企画部調整担当部長 小林裕

それでは第2部パネルディスカッションに入らせて頂きます。ここまでのところでご質問がございまして、質問票にご記入頂いておりましたら、是非お手を挙げて頂きたいと思います。よろしいでしょうか。
それではパネルディスカッションに入ります。パネリストをご紹介致します。本日コーディネーターをお務め頂きます、桜美林大学大学院教授の杉澤秀博先生です。日本女子大学助教授であられます中谷陽明先生です。続いて、ほのぼのネット中原班の島野雅子さんです。三鷹市健康福祉部高齢者支援室長の宿利室長です。それでは杉澤先生、よろしくお願い致します。

○ 桜美林大学大学院教授 杉澤秀博

はじめまして、杉澤です。コーディネーターということで、どのような議論をしようか、市川先生のお話を聞き耳立てて、聞き漏らすまいと真剣に拝聴しておりました。非常に勉強になりました。どのような論点を設定する
かですが、市川先生の最後のお話にございました「連携の際の留意点」というところに焦点をあてたいと思います。市川先生が指摘されたのは4点ございます。その中で「課題の共有化」とそれから「目標と役割の確認」を指摘されております。このシンポジウムには、様々な団体や組織の方々も集まられているだろうと思います。今日は、このような様々な立場の方々が意見を出し合いながら「課題の共有化」を図っていくこと、さらに各地域や団体に戻られて自分達の役割や目標を主体的にどう考え、創造し、担っていくか、つまり「目標と役割の明確化」に少しでも役に立つシンポジウムにしたいと考えております。市川先生のお話は非常に多岐にわたっておりますが、私なりにシンポジウムの議論のたたき台とするために、整理をしてみたいと思います。さらに、各分野のパネリストの方からのお話をお伺いした上で、議論を深めていきたいと考えております。
まず、「課題の共有」に関連して1つ重要な点は、地域ケアの目標、何を目指して地域ケアを行っていくかがあります。この目標として、市川先生が最初に触れられた「直面する地域福祉問題」の中のキーワードである「孤立・閉じこもり」を解消していくことがあると思います。これは現代の社会においては非常に重要な当面する課題となっていると思われます。これを議論のたたき台としながら、地域ケアの目標、何を解決するために地域ケアというものを確立していくのか、創造していくのか、議論してみたいと思います。
それから、シンポジストの方々に何をお話いただくかに関わって、地域ケアの構成概念といいましょうか、要素のことを取りまとめてみたいと思います。市川先生のご指摘された内容は4~5つあっただろうと思います。
1つが利用者の立場からクオリティ・オブ・ライフという概念が提案されております。
利用者側に立ち、その人達の生活をどう保障していくかを考えた場合に、施設で成し得る部分と成し得ない部分があります。施設でなしえないことをどのように実現していくか、施設サービスから在宅サービスへの流れの背景には、このような利用者の立場にたった考えがあります。この点について、歴史的経過も含めて、中谷先生から詳しくご紹介頂ければと考えております。
2つめは、地域ケア推進の担い手です。今日のシンポジウムのテーマである「連携」の際の留意点である「目標と役割の確認」とも密接に関わるわけですが、福祉サービス活動の担い手の多様化の流れの中で、重要な役割を担っている市民の側が「目標と役割」をどのように考えるのか。市川先生から多様化したが上に困難な点も出てくるという指摘がございました。そのあたりも含めて、ほのぼのネットの島野さんからご自身の経験、直面する悩みと、それをどう解消しようとお考えなのか、率直なご意見をお伺いできればと思っております。
この担い手の中でも行政は非常に重要な役割を担っているわけですが、やはり多様化しているがゆえに、行政の役割もこれまでとは違ってきているのではないかと思います。
三鷹の場合には、市民主体ということを行政施策の1つの柱に据えております。このような経験をもつ行政の立場から、宿利さんには担い手の多様化の中における行政の役割についてどうお考えになられているのかをお話いただければと思います。介護保険制度の施行後民間の事業者などもかなり参入してきておりますが、民間業者との行政との共同のあり方ということについてもご紹介頂ければと考えております。
以上、各パネリストにお話しいただきたい内容を紹介致しましたが、シンポジウムで議論したい柱を要約するならば、1つは福祉サービスの新たな担い手をどのように考えていくか。市川先生の講演の「ボランティアとは誰か」という点。このボランティアと行政がどのように連携していくか。それともう1つは、そもそもの問いかけである「地域ケアの目標、課題」をどう考えるのかについて、パネリストの方々のお話が終わりました後に、議論してみたいと思います。パネリストからの話題提供を受け、市川先生もご自分のお話された内容で不足されている点などがあるかもしれませんので、補足の発言があればお話しいただきたいと思います。では、よろしくお願い致します。

○ 日本女子大学助教授 中谷陽明

それではまず、先程杉澤さんがおっしゃった施設から在宅へという流れですが、これはもう間違いないことで、皆さんご承知のことかと思います。では施設はそんなに悪いのか。それまで社会福祉の中心は長く施設福祉中心でしたから、施設は悪いことばかりやっていたのかと思われるかもしれませんが、そうではありません。それはやはり市川先生がおっしゃっていましたが、役割が変わってきたわけです。現在の施設は、先程市川先生がおっしゃったように、地域に開かれた施設である。つまり以前の施設の主たる役割であった衣食住の確保だけでは駄目ですよということです。施設が旧来の役割のみに留まっているのであれば、むしろ今は外から色々施設にプレッシャーを与える方法がいくつも制度化されています。オンブズマン然り。三鷹市がどのようなオンブズマンを
お持ちか勉強しておりませんが、自治体が中心でオンブズマンをお持ちのところもありますし、それから第三者評価。あるいはそのような堅苦しいことではなくても、いくつかの施設では住民の人達、地域住民の方達を入れて協議会のようなものを作っておられるところも少なくありません。そのような形で施設も変わっていかなくてはならないから、施設に対して「変わるように」というだけではなく、その施設が立地している住民の方々にも少し頑張ってもらわなくてはならないというのは、間違いないことだと思います。
施設から在宅へと言いますと、もう施設は要らないのではないかと思われるかもしれませんが、誰もそんなことは言っておりません。市川先生もおっしゃっておりません。
どこの福祉の教科書にも書いておりません。それから皆さん色々聞いたり見たりされているかと思いますが、北欧スウェーデン、デンマーク、フィンランドあたりは、おそらく世界でもっとも福祉が理想的に展開されているといわれる地域です。そこに施設はないのかと言ったら、行った事がある方はご存知かと思いますが、たくさんあります。むしろ増えています。施設もやはり必要ですという話は、当然北欧の国の方々もしていますから、まして日本ですから施設が全てなくなるということではありません。要は施設をどう使っていくかということです。そのような意味では、施設を地域ケアの資源としてどのように位置づけていこうかというのが、多分そこの地域に住んでおられる方々、行政の方々、利用される方々が考えていかなければならないことだと思います。
今の国の方向としては、先程お話にも出ましたが小規模多機能化ということで、なるべく小さく、100 人とか何百人の大きな施設ではなく、小さい施設にして、より家庭的にして、より利用者の顔の見える施設にして、色々な機能をつけましょう。単に長い間入所して頂けるだけではなく、例えば入りたい時は自由に入れて、出たい時は自由に出られる。逆に言えば一日だけちょっと施設に入る。これはホテルみたいなものです。実際にこのような使い方をしているところはゼロではありません。もちろん特別養護老人ホームは難しいですが、老人保健施設という施設はそのように使えるのです。使おうと思えば。東京都世田谷区にあるいくつかの施設は本当に1日から使っています。介護保険を1日から使ってもいいのですよね。悪いことはありません。ちょっと調子が悪いか
ら私は一日だけ行きたいのだとか、昨日ちょっとうちの嫁さんと喧嘩して顔が見たくないから3日だけ入れてくれとか。これは嘘ではなく、実際にそうやって使っているところがあるのです。そのように使えます。そうすれば施設もよさそうという気がしませんか?ただこうやって使うには、色々大変なことはあります。その施設にしても、やはり施設というのは介護保険ですから書類を書かなければならない、点数を計算しなければならない。一日だけと言ってもホテルではありませんから、それなりの事務量も増えますから作業をしなければならない。だけどそのようなことを乗り越えて、そうやって使っているところもあります。それはおもしろいではないか。住民の方々がそのような施設を作ってみてはどうかということであれば、出来るかもしれません。ですから、そのような可能性がありますので、あまり施設は地域の中に要らないのだということではないのだということは、少しお考え頂きたいと思います。
それからもう1つ担い手のお話を市川先生もしておられましたが、これは市川先生のおっしゃるとおり、色々な担い手が出てきました。ただし課題もあるということです。
今のは2番ですが、3番の福祉のまちづくりのところで、福祉のまちづくりや福祉文化を創るというのはとてもいいことなのですが、これも斜めから見るようですが、英語ではよく「not in my back yard」と言われます。私の裏庭は嫌ですよという意味です。
日本では前から迷惑施設という言い方で研究をされていたのですが、もちろん福祉の施設を一緒にすると後で怒られると思いますが、ごみ処理施設と昔は同じような感じでした。ごみ処理施設を作るのはいいことだ。ごみがたくさんあるから、どんどん作って欲しいけれど、私の裏庭には作らないでということなのです。先程市川先生も福祉のまちづくり、福祉の文化づくりということを少々おっしゃられておりました。つまり福祉の対象となっている方々と一緒に住んでいくということは、これは結構覚悟がいることです。出来ないかというと、出来ると思います。私の大学でこの間、テレビでたくさん報道されているからご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、北海道浦河にある「べてるの家」の向谷地さん。べてるの家というのは、もともと赤十字病院のソーシャルワーカーの向谷地さんが始めたのですが、今でいう統合失調者の方々が町で暮らしているというはしりのようなところです。その方のお話を聞いておりますと、浦河というのは北海道の浦河ですから、そのような意味では非常に保守的なところなのです。最初はもちろん、「なんでそんな奴を町に出してくるのだ」ということがあったのでしょうが、別に住民の方と対立するわけではないのですが、色々なことがあって、いつの間にか自分の隣に統合失調者の方がいて、一緒に働いたり、買い物をしたりしているのは普通ではないかと、ようやくなってきました。向谷地さんの言葉だと、私はそんな一生懸命やったわけではない。住民の方を説得しようとか、そうではない。普通にやってきただけである。普通にやってきたと言っても、面白いエピソードが色々ありますけれども、単に普通に町で暮らすにはどうしたらいいかと利用者の人と考えながらやってきただけですというお話を聞いていて、先程の「not in my back yard」のようなことも克服されないことはないのだなとその時感じました。しかしある種の覚悟は必要なのではないかという気がしました。
あと1点だけ申し上げます。市川先生もおっしゃられました、自立のところのお話です。この紙には、自立というのは「自分で立つ」と書いておられます。能力がある人は、その能力を活用すべきだ、強化すべきだということでした。自立というのはもう1つ漢字がございます。自分で律する、英語ではautonomyといいます。そちらの自律支援の方が究極的な自立支援かなと思います。簡単に言いますと自分で律するということは、自分の周りで起きることは自分でコントロール出来るのだということです。人間はそれが一番当たり前の姿なのだということです。この自分を律する支援の方は、能力が限りなくないというように考えられる方だって、目標として設定して、そこに向かって支援が出来ますよね。たとえば頚椎損傷で四肢麻痺の方で、言語の機能までかなり障害を負った方だって、自分の周りで起きること、食べること、寝ること、見たいこと、聞きたいことをコントロールできるような支援は、やろうと思えば出来ますよね。一般的に言われる自立支援というのは自分で立つだけですが、自分を律する方の支援まで究極的には支援してあげなくてはいけないということも少し頭に置いて頂ければと思います。少し時間が延び、あまり脈略がなかったかもしれませんが、市川先生のお話に少し補足させて頂きました。どうもありがとうございました。

○ ほのぼのネット中原班 島野雅子

こんにちは。皆さん見てお分かりでございますが、有名な大学の先生の中に混じりまして、高齢者というのは何歳からかお分かりですよね。
65歳以上です。その中に65歳の高齢のばばが入っているというのは、少々不思議だと思いませんか?そして喋らなくてはいけないということで、何をお話したらいいか頭の中が混乱している次第ですので、経験といいますか、私が携わっておりますほのぼのネット、それから老人給食、少々手話をやっており、耳が聞こえない人と関わっておりますので、そのような中からおしゃべりしたいと思います。私の喋りはまとまりがございませんから、皆さん素晴らしい方だと思いますので、ご自分の頭の中で整理して下さい。
よろしくお願い致します。
それぞれのネット班のやり方があると思いますが、私達はほのぼの広場という名前を付けまして、年齢に関係なく下は0歳から上はいくつくらいまでというお喋り会。いわゆるお茶を飲みながら、ちょっとしたお菓子を食べながらということで集まりを始めました。小さい方がいらっしゃるので、家にある絵本や要らなくなったおもちゃなどを掻き集めました。これは結構好評だったのです。お子さんはおむつをしていて、またそれがかわいいのです。ほとんど集まって下さったのはおばあちゃま達ですが、おばあちゃま達がすごく喜びまして、手拍子を打ったりしてとても雰囲気は良かったのです。私たち中原ネット班では年齢制限なしということを頑張ったのですが、そのお子さん達が保育園・幼稚園に行くようになって、だんだん一人減り、二人減り、今では本当の高齢者
だけが残りましたが、今でも楽しみにやっております。月に1回ですが、それを待ちきれずに、13時から始めるのですが12時30分頃からいらして下さいまして、始めは受身だけだったのです。私達が次はこれをやりましょう、では歌をうたいましょうとしていました。最近では皆さん慣れまして、ご自分から生い立ちや昔の三鷹はこんなところだったとか、私はこの辺りに住んでいたのですが戦争の時はこうだったとか、色々いい話がたくさん出るようになりました。
給食の方のお話をしますと、毎週火曜日と金曜日に調理をしまして配食を致しております。はじめは調理をしまして、配食もすべて一括して同じ人間がしておりました。それが除々に私どもも高齢になりまして、調理・配食といいますと拘束時間が長く、作っているのに3時間くらい立ちっぱなしになるわけです。それが終わってから配達というのはとても大変なのです。どうにかしたいと思っているのですが、受給者の方は本当に待って下さり、配達した時の笑顔に支えられて私達はやっております。「また来週も会いたいわね」ということで、お互いがボランティア関係だと思っております。とにかく配達が大変になりまして、それでは配達だけでもかまわない、3時間も4時間も拘束する時間はないけれども、1時間や30分だけでもお手伝いできるという方がいらっしゃるといいなと思って市報などに載せて頂きましたら、何人か集まって頂きました。今は車で来て下さる方もいらっしゃいますし、特にうれしいのはご夫婦でして頂いている方です。ご自分は運転できないけれど、ご主人が運転できるということで、ご夫婦で本当に関わって下さっている方にはありがたいと思っております。やはり男性が定年になって給食の配達をやろうということは、初めは大変だと思います。うちの夫だったら、今もまだ仕事を続けているのですが、やってくれないのではないかと思っております。男性の方が今3人ほどやって下さっているのですが、ありがたいと思っております。受給者の方、これは本当に待って下さいまして、ここにも孤独や孤立ということがありますけれども、その日に配達の者と私が行くのですが待っていて下さるのです。私達を離したくない、帰したくないのです。次から次へと「お茶を飲んでいかない」と言って下さるのですが、次の方がお待ちになっていらっしゃるので私達はそうはしていられないのです。最近はないのですが、とにかく時間がちょっとでも遅いと電話がかかってくるのです。「まだうちに来ていないのですが」と言われるので、そうするとお蕎麦屋さんではありませんが「只今出ました」と留守番の者が返事して下さるそうです。それくらい待って下さって、本当に今では楽しんでやっております。見守りではないかと思っております。
あとは聞こえない方と関わっていることで、障害者の気持ちというものが少しわかると思います。私自身、兄嫁が突然一級の障害になりまして、26年間病院を出たり入ったりしておりました。兄のところは子供がいないものですから、私が世話に行きました。
それはうちの夫だとか、夫の母もおり、それの協力があって私が姉の介護に行けたことと思って感謝をしております。その姉も亡くなりましたが、そのような意味で障害者にも関わったということで、色々な意味で人間は生きていてよかったとか、健常でよかった、ありがたいという気持ちが私自身わいておりますし、どれも楽しんでやっております。見守りをやるきっかけというのは、皆さんそれぞれ色々だと思いますが、やってみると意外と楽しいものです。少し話が横道にそれました。すみません。ここにいらしている方はそういうことは皆さんされている方ばかりだと思いますが、なにしろ人間を好きにならないと出来ないと思いますので、皆さん人と接することを大事にして、これからそのような考えであれば三鷹の市民や皆様ももっともっと向上するのではないかと
思います。私が偉いわけではありませんが、本当に人と人とを好きになって下さい。私も地域で小さな見守りを続けようと思っております。

まちづくりシンポジウム(第1回)パネルディスカッション(2)へ続く

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