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まちづくりシンポジウム(第2回)基調講演(3)

作成・発信部署:企画部 企画経営課

公開日:2005年4月6日 最終更新日:2009年3月31日

まちづくりシンポジウム(第2回)基調講演(2)からの続き

「安全安心のまちづくり」

<ビデオ放映:約10分>

以上です。ありがとうございました。いかがでしたでしょうか。「地域安全マップづくり」で、子供たちが腕章をつけて歩いていくと、地域の住民があちこちから「ご苦労様」「頑張ってね」「偉いね」と声をかけてくるのです。子供たちはますますやる気になって、小学生といえども地域に対して貢献しているのだ、できるのだという、そのような成功体験・達成感。これが子供の健全育成にとって、ものすごくプラスになります。それから、ご覧頂いてお分かりのように、あのようにコミュニケーションをとりながら、ああでもない、こうでもないと言いながら街を歩きます。それから地域住民にインタビューしながら、大人との会話もどんどん弾んでいきます。このコミュニケーション能力の向上というのは、実は非行防止に繋がっているわけです。今度の長崎の佐世保の事件をみても、明らかにコミュニケーション能力が不足しているから起きた事件です。つまり今の子供たちというのは情報化社会真っ只中ですから、情報メディアを駆使する能力は非常に優れております。しかしそれで全て人生やっていけると勘違いしてしまっています。そうやって自分の情報メディアとだけ付き合って、どんどん自分だけの世界に閉じこもる。引きこもっていきます。そうすると、どんどんコミュニケーション能力が弱まります。コミュニケーションが出来ないということは、相手ときちんと話が出来ないということです。閉じこもっている、引きこもっているだけならそれでいいのですが、情報化社会ですから、次から次へと情報だけは入ってきます。そうすると自分の欲望、要求がどんどん大きくなってきます。しかしそれをコミュニケーションでもって実現しようとはしない。説得したり、交渉したり、取引をして相手の様子を伺いながら、ここまでは言っていいかな、このくらいであきらめようというように、相手と折り合いをつける。そのようなことが出来ない、自信がない、恐い。そうなったらどう自分の欲望を実現させるか。最後は力だけです。交渉したり取引したりしてやることに自信がなければ、自分の欲望の実現手段は力しかありません。これが非行に進んでいくわけです。ですから「地域安全マップ」づくりは色々なプラスの要素があります。子供自身の被害防止能力を高める、それからコミュニケーション能力を高めて、非行防止・加害防止につながる。そして、地域への愛着心。子供の達成感、成功体験。それから無関心層を巻き込む、そのような波及効果。
色々な要素があるマップづくりです。
しかし、ある地域によっては間違ったやり方でマップづくりをしているところがあります。どのような間違ったやり方かといいますと、犯罪が起こりそうなところではなく、犯罪が起きたところを描いていく地図。これでは何もなりません。なぜかというと、犯罪が起きたところでまた次の犯罪が起きるのですか。そんな保証は何もありません。先程、注意力の話をしました。犯罪が起きたところだけ注意すればいいという話になると、犯罪が起きていないところは注意しなくていいという話になってしまう。そこで被害が起きたらどうするのですか。ですから、あくまでも犯罪が起きたところではなく、起こりそうなところ。つまり領域性・監視性が低いところ。小学生の場合には、領域性は入りやすいか入りにくいか、監視性は見えやすいか見えにくいかという視点で教えます。それから犯罪が起きたところ。このようなものは警察が作っているマップですが、それを同じようなことを学校でやっても仕方がありません。起きたところだけ覚えさせるのは丸暗記です。そんなことをしていては、子供の理解力は高まってきません。例えば仮に自分の学区だけ、どこで犯罪が起きたか把握したとしても、その子供たちはそこでしか遊ばないのですか。三鷹の子供は新宿に行きませんか。三鷹の子供は渋谷に行きませんか。新宿に行っても渋谷に行っても、危ない場所が分かるような力をつけなければ、何の意味もありません。
それからよく失敗するのが、熱心な先生になればなるほど、犯罪が起きたところに執着していると、どんどん子供に聞くわけです。「どんなところで、どんな被害にあったのか」子供は素直ですから、全て話をしてしまう。家に帰って親に、「今日学校でマップ作りをやって、先生から『お前はどこで被害にあったか』と聞かれて全部喋っちゃった」と言うと、親が怒って学校にクレームの電話を入れるわけです。「何をやっているのか」と。子供の安全を守ることをやっていながら、子供の心の傷、二度と思い出したくない被害体験をなぜ引っ張り出すのか。心の傷、トラウマ。これを広げるようなことを学校も先生もやってはいけません。そのためには、犯罪が起きたところではなく、犯罪が起こりそうなところを探していけば、子供の能力向上には十分であります。そのようなことを注意しながらやれば、効果絶大なものであります。
そろそろ時間なので、最後にまとめをさせて頂きます。今日は犯罪の機会論に基づく話をさせて頂きました。これは犯罪の原因をなくそうなどという大それたことは考えておりません。このような言い方をすると、犯罪の原因をなくさなければ、例えば三鷹で犯罪機会が減れば、その人達は世田谷に行くぞ、杉並に行くぞ、そこでやるぞと言います。確かにそうかもしれません。でも、そうではないかもしれません。特に少年犯罪の場合には、そんなにあちこち新幹線を使って、どこか行ったりして犯罪をすることは出来ません。自分達の地域の周りだけ、少なくとも機会を減らしていけば、それでも犯罪をしたい少年は一生懸命機会を探します。でもあそこも駄目、ここも駄目、そうやっていくうちに子供はどんどん成長していきます。そして「なんであの時、あんな犯罪をしようと思ったのかな」と、そうやって自然に心が治ってきます。あるいはスポーツや音楽。こっちの方が犯罪よりおもしろいと子供は気が付いてきます。
その時間稼ぎをするのが、犯罪の機会論です。このようなことは、すぐに出来ることばかりです。実はそういう小さくてもいいから、1つ1つ犯罪の機会を潰していくこと。
これが最も現実的で、最も効果的な犯罪対策なのです。このようなことは医学の世界ではあたりまえです。生活習慣病。お酒の飲みすぎには注意しましょうとか、野菜はいっぱいとりましょうとか、ある意味些細なことばかりです。でもそれが巡り巡って、人間を死に至らしめるような大きな病気を防ぐというわけです。
犯罪の世界も全く同じです。そのような小さくてもいいから、機会を1つ1つ潰していくこと。それが凶悪犯罪をも防ぐというわけであります。欧米ではこのようなことをベルベットグローブとアイアンフィストと呼んでいます。ベルベットグローブは柔らかい手袋、アイアンフィストは鉄のこぶしです。鉄のこぶしの周りに柔らかい手袋をはめている、そのようなイメージです。この鉄のこぶしは、凶悪犯罪、組織犯罪、暴力団犯罪、国際犯罪、外国人犯罪、ハイテク犯罪、コンピュータ犯罪です。これは警察しか出来ないから、警察にお願いする。しかしその周りの柔らかい手袋、ベルベットグローブは、日常生活・生活習慣において、犯罪の機会を1つ1つ減らしていくことです。これこそが安全安心のまちづくりであって、これだったら一般市民と行政が一体となって取り組むことが出来る領域であります。おそらくこのような考え方が、これからの日本に必要になってくると思います。最後に今日お集まりの皆さんは、この柔らかい手袋、ベルベットグローブの重要な担い手であるということを強調して、私の話を終わりたいと思います。どうもご清聴ありがとうございました。

○ 小林氏どうもありがとうございました。大変分かりやすいお話でした。これから第2部のパネルディスカッションに入りますが、会場を若干変更致しますので、5分ほど休憩させて頂きます。それでは5分後にパネルディスカッションを開催致します。よろしくお願い致します。

休憩(14:15~14:20 5分間)

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