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施政方針
作成・発信部署:企画部 財政課
公開日:2020年7月1日 最終更新日:2025年2月17日
令和7年度の一般会計予算及び特別会計予算を提案するに当たりまして、施政方針を申し上げます。
1 はじめに
~「祈る平和」と「創る平和」、共に進める三鷹~
「市民参加でまちづくり協議会(愛称:マチコエ)」の多層的な市民参加を軸に、多くの市民の皆様の声を反映した『三鷹市基本構想』と『第5次三鷹市基本計画』を令和6年に策定しました。まちづくりのビジョンを共有し、市民の皆様と共に未来に向けて、着実な一歩を踏み出した年度となりました。
さて、私たちを取り巻く社会は急速に変化しています。物価高騰や少子高齢化、加速するデジタル化、そして深刻化する気候変動等は、日々の市民生活やまちのあり方に大きな影響を及ぼしています。だからこそ、これまで築き上げてきた地域力と共生の精神を大切にしながら、次世代に持続可能な豊かな暮らしを引き継いでいかなければなりません。私たちはその責務をしっかり果たしていかなければいけないと改めて強く思っています。
令和7年度は、戦後80年という歴史の節目を迎えます。幸いにも、その間、日本は直接、戦争に関わることは一度もありませんでした。しかし、それは決して偶然ではありません。これまでの先人たちの努力、知恵と工夫によって実現してきたものです。だからこそ、私たちはこの節目に当たり、「祈る平和」と「創る平和」を世界に向けて発信し、共に進んでいかなければなりません。私たちに今できることは何かを問い、「命の大切さ」、「平和の尊さ」を真正面から受け止めていきたいと考えています。
一方、激甚化する自然災害が全国各地で猛威を振るっています。近年、三鷹市では大きな被害はなかったものの、令和6年8月の台風では避難所を設置するなど、紙一重での厳しい状況が続いています。市民の皆様の生命と財産を守り、質の高い防災・減災体制を構築し、引き続き「防災・減災のまちづくり」を進めます。また、地球温暖化による気候危機への対応は喫緊の課題と言えます。三鷹市は「ゼロカーボンシティ」を宣言した自治体として、2050年までに二酸化炭素排出量実質ゼロを目指し、脱炭素社会の実現に向けた取組を一層前進させます。再生可能エネルギーの活用等に率先して取り組むほか、持続可能な未来に向けて皆様と共に歩みを進めていきます。
時代の転換点にあって、様々な課題が山積しています。政策の重点化と優先順位を明確にしながら、これらの課題の解決に邁進します。また、デジタル技術の活用、柔軟で機動的な組織づくりによって、行財政改革の推進を図るなど、「あすへのまち三鷹」を目指してまちづくりを推進します。
2 『第5次三鷹市基本計画』に基づく施策の推進
令和7年度は、『三鷹市基本構想』と『第5次三鷹市基本計画』の2年目の年となります。より一層スピード感を持って、優先課題である「コミュニティ創生と未来への投資」を中心に、次の5つの施策を着実に推進します。
1点目は、市全体を緑あふれるまち並みとする“百年の森”の実現と地域の特性が生きるまちづくりです。“子どもの森(仮称)”をコンセプトとした「三鷹駅南口中央通り東地区再開発事業」については、地権者等と合意形成を図りながら、令和8年度の都市計画決定を目指すとともに、さくら通り駐車場・駐輪場用地の一部にUR賃貸住宅を整備するための更地化工事を行います。また、当地区では段階的に整備を進めることにより、事業進捗に応じて駐輪場や駐車場の代替えのほか、事業継続を希望する地区内事業者の仮移転先等が必要となることから、まちづくり用地の確保に向けて検討を進めます。“子どもの森(仮称)”との連携を見据えて検討を進めている三鷹幼稚園跡地については、地権者との調整を踏まえ、事業スケジュールを見直すとともに、開設に係る経費については、補正予算で計上します。老朽化が進んでいる上連雀三丁目暫定集会施設については、民間事業者との協働による施設整備を視野に、測量等の事前調査を行うほか、三鷹こ線人道橋の跡地については、階段や橋桁の一部を保存するポケットスペースを整備します。
大沢地区では、国立天文台敷地を中心とした地域の共有地「コモンズ」の創出に向けて、建物の配置や道路計画案等を盛り込んだ「土地利用整備計画」を策定するとともに、大沢総合グラウンドのリニューアル整備に伴い、ボール遊びエリア、バスケットボールエリア及びスケートボードエリアを新設します。
井口地区では、恒久的なスポーツ施設となる井口グラウンドと隣接する児童遊園を地域の防災力を高める防災拠点として一体的に整備し、令和7年7月から利用を開始します。また、敷地南側への医療機関の誘致については、令和10年4月の開設に向けて、定期借地契約を締結します。
牟礼地区では、牟礼の里農園(仮称)の整備を進めるとともに、隣接する農地の借用等により体験農園と市民農園を開設し、公園エリアから玉川上水までの連続した緑と農の空間を創出します。
2点目は、脱炭素社会の実現と気候変動に適応したまちづくりです。まちづくり総合研究所において、再生可能エネルギー等の活用の研究を進めるとともに、市民センターにおいてカーボンオフセット都市ガス及び再生可能エネルギー電気への切り替えを行い、市が率先して温室効果ガスの削減を図ります。
気候変動への対応としては、市内児童遊園2箇所にミスト設備を設置します。
3点目は、防災・減災・安全安心のまちづくりです。総合的な防災施策と交通安全を含めた平時からの安全・安心のまちづくりを一元的に推進するため、「防災安全部」を新設します。災害情報伝達の充実としては、防災行政無線の難聴地域解消に向けた戸別受信機の貸与等を新たに実施するとともに、消防活動困難地域である井の頭地域の道路の拡幅整備に向けて、土地開発公社による用地の先行取得に取り組みます。また、災害時における要支援者・要配慮者の支援として、福祉避難所のあり方の検討などに取り組みます。
防犯対策としては、大沢地域で発生した強盗未遂事件を受け、緊急対策として新設した住宅等防犯対策の補助を継続するとともに、防犯カメラ、街路灯の増設や安全安心パトロールの拡充を図るなど、犯罪の抑止と地域防犯力の向上に取り組みます。
老朽化した施設への対応としては、「新都市再生ビジョン」に基づき、学校施設の大規模改修や図書館、コミュニティ・センターの設備改修、本庁舎・議場棟の空調設備等の改修に向けた実施設計など、計画的な維持保全と更新に取り組みます。
4点目は、コミュニティの創生と地域と人をつなぐまちづくりです。高齢化や担い手不足、連携不足といった地域コミュニティの課題を踏まえ、令和9年度の事務局機能の法人化を目指し、事務の共通化に向けた業務のDX化やデジタル機器等の更新を支援します。また、みたか地域ポイントについては、ポイント付与対象事業を拡充するほか、市が寄贈を受けた物件については、若手クリエーターのスタートアップ支援の場として改修を行い、地域と連携した事業展開を図ります。
誰もが暮らしやすいまちの実現に向けては、当事者を含めて多様な意見を反映し、「認知症にやさしいまち三鷹条例(仮称)」の制定に取り組みます。また、調布基地跡地における障がい者福祉施設の整備については、令和8年4月の開設を目指し、調布市及び府中市とともに建設費及び開設準備の支援を行います。
コミュニティバスの抜本的な見直しとしては、「北野ルート」のAIデマンド交通への転換を検討するほか、西部地区のエリア外運賃については、妊婦等を対象とした割引を開始するなど、更なる利便性の向上を図ります。
5点目は、子どもが輝き安心して暮らせるまちづくりです。令和8年度の制定を予定している「三鷹市子どもの権利に関する条例(仮称)」については、子どもの意見を反映するためのアンケート調査を実施し、素案を作成します。また、子育て世帯の負担軽減として、東京都の補助制度を活用し、第1子の保育料を無償化し、保育料を完全無償とするほか、保護者の就労等に関わらず、0~2歳児を対象とした保育所や幼稚園等での定期的な預かり事業を開始します。
「学校3部制」の取組では、第2部の子どもの居場所となる地域子どもクラブについて毎日型の実施校を拡充するほか、今後の3部制の事業展開の方向性を示す推進プランを策定します。中原小学校の建替えに向けた取組では、学校3部制のモデルとなる施設機能を検討するとともに、基本設計に着手します。また、戦後80年の平和事業として、市内中学生を長崎市に派遣する事業や近隣市との連携事業を実施し、戦争の記憶と平和への願いを次世代に継承していきます。
3 持続可能な自治体経営の推進
令和7年度は、市税や各種交付金が堅調な見通しとなる一方、ウクライナ戦争や円安などに起因した物価上昇や、労働力の不足による調達コストの増嵩などにより、歳入の伸びが財政的な余力に直結しない厳しい予算編成となりました。今後も予断を許さない財政状況が見込まれており、経済状況の影響を最小限となるよう強固な財政基盤の構築に向けて、行財政改革を推進します。
行政サービスの適正化に向けた取組としては、公設民営保育園4園を公私連携型保育所へ移行し、保育の質の確保と安定した事業運営を支援しながら、財源確保を図ります。そのほか、サンセット事業として実施してきた自転車用ヘルメット購入費の助成を廃止するとともに、事務事業の全般について、費用対効果等に課題のある事業を洗い出す「歳出の総点検」を試行的に実施します。
効率的で効果的な組織体制の構築に向けては、「防災安全部」を新設するとともに、学童保育所及び地域子どもクラブに関する事務については、教育委員会に移管し、放課後の学校施設における一体的な居場所づくりを早期に進めます。また、事業の新規・拡充に合わせ、適切に職員を配置します。
サービスの質や働き方の変革を実現するためのDXの推進は、今後の行財政改革の中心となるものです。ガバメントクラウドへの移行を9月に予定しており、国の補助金を活用しながら市の負担が最小限となるよう努めるほか、学童保育所及び保育園入所等のオンライン申請の拡充や、庁内の文書のペーパーレス化に向けた試行、生成AIの試行利用の継続などに取り組みます。
受益と負担の適正化に向けては、国民健康保険税を低所得者の負担に配慮しながら改定を行うほか、学童保育所の育成料について、待機児童ゼロの継続や多様なニーズへの対応などを踏まえ、改定を行います。
なお、ふるさと納税による市税への影響は年々拡大し、令和7年度は約17億円の減収となる見込みです。三鷹こ線人道橋跡のポケットスペースの整備に当たり、橋の解体後の部材を活用したオリジナルグッズ等を返礼品とするクラウドファンディングを実施するなど、市の魅力発信と財源確保を図ります。
また、引き続き、国や東京都等の補助金を有効に活用し、財源確保を図りながら、事業の拡充に取り組みます。令和6年度の国の補正予算で措置された物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金の一部を令和7年度に振り向け、介護・障がい福祉サービス事業所や保育施設、医療機関等への支援の財源とします。
市債については、世代間負担の公平性を確保する観点から、都市再生の取組などの財源として活用するほか、三鷹中央防災公園整備事業債について、利率見直しの機会を捉えて、一部繰上償還を実施し、返済期間の短縮を検討します。基金については、一定の活用を図りますが、令和6年度補正予算において、今後の財政運営を見据えて基金積立てを行い、一定水準の基金残高を確保するよう努めます。
4 令和7年度予算の財政的特徴点
令和7年度の予算規模は、一般会計が894億5,373万9千円で、前年度比62億6,576万7千円、7.5%の増となります。社会保障関連経費の伸びとともに、物価高騰や労務単価の上昇などにより行政コスト全般が増嵩し、過去最大の規模となっています。市政運営の根幹となる市税収入は419億1,134万2千円で、令和6年度に実施した定額減税による減収分の回復などもあり、前年度比20億6,188万5千円、5.2%の増を見込んでいます。また、基金のとりくずしは31億6,832万9千円で、前年度比3億1,034万円、8.9%の減、市債の発行予定額は25億2,700万円で、前年度比11億6,100万円、85.0%の増となります。
下水道事業会計を除く特別会計全体の予算規模は393億3,090万8千円で、前年度比3億8,916万4千円、1.0%の減となります。下水道事業会計の収益的収支予算は1億5,221万円の純利益、資本的収支予算は6億4,408万9千円の不足で、この不足額は損益勘定留保資金等で補塡します。
以上が、令和7年度を迎えるに当たっての施政方針及び予算概要です。
議員各位のご理解とご協力をいただきながら、市民の皆様の暮らしに寄り添いつつ、まちの声をカタチにする未来志向のまちづくりをスピーディーに進めていくために、誠心誠意、努力していく所存です。
ご審議のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
令和7年2月
三鷹市長 河村 孝
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