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施政方針
作成・発信部署:企画部 財政課
公開日:2020年7月1日 最終更新日:2026年2月17日
令和8年度の一般会計予算及び特別会計予算を提案するに当たりまして、施政方針を申し上げます。
1 はじめに
~原点回帰と未来志向~
三鷹市には、半世紀にわたり守り抜いてきた「志」があります。それは昭和50年、戦争の苦難を乗り越えた人々が「三鷹市基本構想」で表明した、「平和」と「しあわせな市民生活」の実現に向けた決意です。この精神はその後の歩みの中で「平和の希求」「人権の尊重」「自治の推進」という理念へと引き継がれ、今も私たちを導く大切な指針となっています。
これまで日本では、平和は当たり前のように存在してきました。それは先人たちのたゆまぬ努力が実を結んだ、尊く幸せな姿でもあります。しかし現在、ひとたび世界に目を向ければ、既存の国際秩序が揺らぎ、力によって平穏な暮らしが脅かされる厳しい現実が広がっています。
私たちはこれを遠い異国の出来事として傍観することはできません。平和は「あって当然のもの」ではなく、それを希求する確かな意志と、維持するための具体的な行動があって初めて守り抜けるのだということを、三鷹市の原点に立ち返り、改めて認識しなければなりません。「三鷹市平和推進条例」の案も、こうした考えに立脚しています。今後はさらに、平和の希求を地域に閉ざされたものとするだけでなく、三鷹の地から広く世界へ発信し、分かち合う取り組みへもその歩みを広げていきたいと考えています。
平和の希求を、私たちの最も身近なところに立ち返って見つめ直すと、そこには守り抜くべき大切な姿があります。
私たちが次世代へつなぐべき平和は、単に「戦争がない状態」を指すものではありません。環境・差別・経済格差などの諸課題を克服する「積極的平和」、さらには家族や友人と笑顔で過ごし、学び、働き、安心して暮らすという「当たり前の日常」そのものです。しかしこの尊い日常は、人為的な争いのみならず突如として襲う自然災害によっても、脆く崩れ去ってしまう危うさをはらんでいます。
いかに平和を願おうとも、生活の安全という土台が揺らいでしまっては、その思いを具体的な行動として継続していくことは困難です。昨今の激甚化する気象災害や地震の脅威を前に、私たちは暮らしの基盤を確かなものにしていかなければなりません。いかなる時にも市民の生命を守り、平穏な暮らしを維持できる災害に強いまちを築くことは、平和な日常を守り抜くことと、いわば表裏一体の歩みです。だからこそ私は、市長就任以来一貫して、「防災・減災」をまちづくりの原点に据えてきました。
この「防災・減災」のまちづくりの基盤は、「都市再生」の取組です。公共施設の着実な維持や更新、そして、三鷹駅南口中央通り東地区再開発や国立天文台周辺のまちづくりといった大規模な事業に至るまで、すべては市民の皆様の生命と平穏な暮らしを守るという目的の下にあります。これらは単なるインフラ整備に留まらず、将来にわたる安全を確保し、市民生活を支え続けるために必須の取組です。
現在、資材高騰や人材不足など、事業環境は厳しさを増していますが、こうした時だからこそ、計画の根幹を維持しつつ、手法や時期について情勢の変化に即した不断の見直しが求められます。とりわけ市の将来を左右する大規模プロジェクトについては、社会情勢や市民ニーズを的確に捉え、事業の質をさらに高めるための「磨き上げ」を行っていかなければなりません。厳しい現況を直視しつつ、持続可能性を見据えた視点を反映させることが、三鷹の価値を高めることにつながると私は確信しています。
平和への歩みを次世代へつなぎ、安全な都市の基盤を創り引き継いでいくことは、今を生きる私たちの責務です。
戦後80年を経て新たな一歩を踏み出す今、私たちは三鷹市の原点に立ち返り、先人たちが守り抜いてきた平穏な日常を、未来に向けて着実に形づくっていかなければなりません。厳しい情勢下にあればこそ、一つひとつの事業に誠実に向き合い、市民の皆様と共に「真に平和な都市」の実現に向け全力を尽くしてまいります。
2 『第5次三鷹市基本計画』に基づく施策の推進
令和8年度は、「第5次三鷹市基本計画」の折り返しを迎えます。物価高騰への機動的な対応に万全を期すとともに、将来にわたる豊かな市民生活を確かなものとするため、次の5つの施策を軸に、着実に事業を推進します。
第1は、平和を次世代へ受け継ぎ、世界に開かれたまちへの取組です。
平和の大切さを風化させることなく未来へ継承するため、「三鷹市平和推進条例」への改正を予定しており、11月30日を「三鷹市平和の日」とし、各種事業を実施するほか、次代を担う中学生の長崎派遣事業を継続します。また、新たにアメリカのカリフォルニア州ラ・カニャーダ・フリントリッジ市との交流をスタートし、姉妹都市の締結も視野に入れ、市民同士の交流を通して相互理解を深め、平和な未来へと歩みを進めていきます。
第2は、「防災・減災」を軸とした安全安心のまちづくりです。
優先プロジェクトについては、昨今の資材高騰等を直視し、計画の最適化を図ります。三鷹駅南口中央通り東地区再開発事業については、“子どもの森(仮称)”のコンセプトを維持したうえで、建物規模を抑えながら緑豊かなオープンスペースを確保し、にぎわいを創出するため、施設のゾーニングや配置計画案を再検討します。大沢地区の国立天文台周辺のまちづくりでは、効率的に事業を実施する工夫等を検討します。また、市庁舎等については、緊急度の高い空調・換気設備等の改修工事に着手するほか、延命化に向けた基礎調査を実施します。「新都市再生ビジョン」については、優先プロジェクトの再調整と整合を図るとともに、労務単価の上昇等を踏まえたスケジュール等の見直しの検討に着手します。
災害への備えとしては、元気創造プラザを特定福祉避難所に位置づけ、要配慮者の支援体制の強化を図るほか、避難所用備蓄資機材の配備やトイレカーの導入など、避難所環境の改善に取り組みます。また、住宅等防犯対策への助成の継続や人物の検知機能等を備えたAIカメラの設置など、地域防犯力の向上を図ります。持続可能で安全・快適な交福ネットワークの構築に向けた取組としては、北野地区でのAIデマンド交通の実証運行を開始します。
第3は、笑顔があふれる子ども・若者支援と教育施策の充実です。
「三鷹市子どもの権利に関する条例(仮称)」の制定に向けて取り組むほか、三鷹幼稚園跡地を活用し、子どもの居場所や若者支援の機能を兼ね備えた施設を開設します。学校3部制の取組では、地域開放等を担う運営組織の設立に向けて検討するとともに、子どもの居場所となる地域子どもクラブの毎日型の実施校を拡充します。また、3部制に対応した施設を目指す中原小学校では実施設計に着手します。
長期欠席・不登校児童への対応については、校内支援教室支援員を拡充して配置するほか、医療機関と連携した支援を継続します。また、幼稚園入園料の補助の拡充や大学等進学応援金の創設など、保護者等の経済的負担の軽減を図ります。
第4は、誰もが安心して暮らせる健康・福祉のまちづくりです。
令和8年3月に制定を予定している「認知症とともに生きるまち三鷹条例」に基づき支援の充実を図るほか、開設3年を迎える福祉Laboどんぐり山では、これまでの取組を評価し、今後の施設運営に反映していきます。また、調布市及び府中市とともに進めてきた調布基地跡地の障がい者福祉施設については、令和8年4月に開設し、重度障がい者等のサービスの充実を図ります。
病院機能の維持・拡充に向けた支援としては、旧三立SOHOセンター用地等について市内病院を対象に公募型プロポーザルにより売却するほか、井口地区における医療機関の誘致については、公募で選定した病院の建設工事の入札状況を踏まえ、引き続き調整を図りながら、定期借地契約の締結に向けて取り組みます。
第5は、持続可能な未来の創造に向けた地域の活性化です。
公共施設での再生可能エネルギー利用を市が率先して実行し、脱炭素社会への歩みを加速させます。また、激甚化する猛暑への対策として、連雀中央公園に水遊びができる施設とパーゴラタイプミスト設備の設置のほか、低所得及び生活保護世帯へのエアコン購入費用の助成や市立小学校に通う児童への保冷剤付きのランドセル用背当てパッドの配布など、対策の強化に取り組みます。
コミュニティの創生に向けては、令和9年10月の「住協活動等支援法人(仮称)」の設立に向けて取り組むとともに、若手クリエーターのスタートアップ支援を目指す「三鷹ヴィレッジ・森のアトリエ」を、令和8年4月に開設します。また、「三鷹まるごと博物館条例」の施行を契機とした多拠点型の博物館としての施策の展開を図るほか、牟礼里山農園(仮称)については、三鷹の原風景を形づくっている農空間を保全するため、令和9年3月の開園に向けて整備を進めます。
こうした将来を見据えた施策とともに、現在、市民生活等を直撃している物価高騰への対応も進めます。デジタル商品券の発行や住民税非課税世帯等への給付金の給付など、令和7年度から切れ目なく支援を継続するとともに、介護・障がい福祉サービス事業所や保育施設、学校給食の支援について拡充を図ります。
3 持続可能な自治体経営の推進
これらの施策を着実に実行し、将来にわたり市民サービスを維持していくためには、強固で持続可能な経営基盤の確立が不可欠です。
行政サービスの適正化に向けた取組としては、公共施設の維持管理に「包括施設管理委託」を導入し、業務の効率化と予防保全の推進を図るとともに、公契約条例に基づき労働報酬下限額を調査・審議する審議会の設置など、公共サービスの更なる質の向上を目指します。また、事務事業の全般について、継続の必要性等を検証する「歳出の総点検」に引き続き取り組みます。
複雑化する行政課題に即応できる組織体制の再編に向けては、平和や人権施策へのきめ細かな対応を図る「平和人権課」や、市史編さん、適正事務推進を担う臨時組織を新設するとともに、事業の新規・拡充に合わせた人員配置を行います。
行政運営の質的向上に向けた「スマートシティ三鷹」の推進については、市ホームページの全面リニューアルにより、情報のアクセシビリティを高めるほか、保育園の入園選考や次期基本計画策定における生成AIの活用、障がい者の就労支援に向けた分身ロボットの実証、さらには高齢者へのスマホ購入助成によるデジタルデバイド対策など、誰もがデジタルの恩恵を享受できる社会を目指します。
受益と負担の適正化として、子ども・子育て支援金制度の新設に伴い、国民健康保険税の改定を行います。
なお、ふるさと納税による市税への影響は18億円を超える減収が見込まれています。そのため、新たな返礼品の検討やトイレカーの購入に当たりクラウドファンディングを実施するなど、まちづくりに多くの共感を得ながら財源確保に努めるとともに、令和7年度に東京都市長会を代表して総務省を訪問し、東京都等と共同要請を行った本制度の抜本的な見直しについても、継続して働きかけます。
また、国や東京都の補助金を有効に活用し、事業の拡充に取り組むとともに、令和7年度の国の補正予算で措置された物価高騰に係る交付金の一部を令和8年度に振り向け、市独自の物価高騰対策事業の財源とします。
市債については、世代間負担の公平性の観点から、都市再生の取組を中心に活用を図るほか、三鷹中央防災公園整備事業債の一部繰上償還を実施し、返済期間の短縮を図ります。基金については一定の活用を図りますが、令和7年度補正予算において基金積立てを行い、一定水準の残高を確保するよう努めます。
4 令和8年度予算の財政的特徴点
令和8年度の予算規模は、一般会計が926億9,525万1千円で、前年度比32億4,151万2千円、3.6%の増となります。社会保障関連経費の伸びや人件費の増とともに、物価高騰や労務単価の上昇などにより行政コスト全般が増嵩し、過去最大の規模となっています。市政運営の根幹となる市税収入は、給与所得、納税義務者数の増加などによる個人市民税の増などにより、過去最高額となるとともに、地方消費税交付金や株式譲渡所得割交付金が前年度を上回ることから、市税及び各種交付金の総額では、前年度比32億296万1千円の増となり、歳入面では堅調な状況が続いています。そのため、収支不足を埋める基金のとりくずしは22億1,072万1千円で、前年度比9億5,760万8千円、30.2%の減となるとともに、市債の発行予定額は21億6,000万円で、前年度比3億6,700万円、14.5%の減となります。
下水道事業会計を除く特別会計全体の予算規模は405億4,169万7千円で、前年度比12億1,078万9千円、3.1%の増となります。下水道事業会計の収益的収支予算は2億1,876万5千円の純利益、資本的収支予算は7億2,558万円の不足で、この不足額は損益勘定留保資金等で補塡します。
以上が、令和8年度を迎えるに当たっての施政方針及び予算概要です。
議員各位のご理解とご協力をいただきながら、市民の皆様の暮らしに寄り添いつつ、まちの声をカタチにする未来志向のまちづくりを着実に進めていくために、誠心誠意、努力していく所存です。
ご審議のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
令和8年2月
三鷹市長 河村 孝
施政方針 ・ 予算概要の目次
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