ここから本文です
「第12回 回廊ギャラリー展示絵本作品公募」 選考結果
作成・発信部署:スポーツと文化部 芸術文化課
公開日:2025年5月30日 最終更新日:2025年5月30日
入賞作品は、星と森と絵本の家の回廊ギャラリーにて順次展示します
第12回 三鷹市星と森と絵本の家回廊ギャラリー展示絵本作品公募の、選考結果をお知らせします。
今回は63点の作品を応募いただき、選考の結果、下記のとおり6作品が入賞しました。
最優秀賞
『星のかおりにつつまれて』
セキユキナ 作(神奈川県)
優秀作
『よるのおふろ』
新谷 直子 作(東京都)
『ちびちゃいのおしゃべり<てんたい>』
このはな れん 作(富山県)
佳作
『つきのねーねと ちきゅうのぼく』
かくさん 作(埼玉県)
『雀と飴玉の月』
伊藤 祥吾 作(愛知県)
『ほしあかり』
トラコ 作(千葉県)
展示について
入賞作品は、星と森と絵本の家の回廊ギャラリーで順次展示します。
各作品の展示スケジュールは、決まり次第ホームページでお知らせします。
最終選考に残った作品
- 『こころ』 柳嘉茗 作
- 『星くずのきゅうす』 富岡仁都 作
- 『つきよみ』 新島誠 作
- 『ほしのほし』 樋口亜希子 作
- 『てんたいぜったいでっかいやん』 7 作
選考委員特別賞
『やさいたちの宇宙旅行』 石井天都 作
選考委員講評
絵本家 広松 由希子
12回目となった絵本公募では、入選作への絞り込みにはかなり議論を重ねましたが、最優秀賞1作、優秀作2作、佳作3作はピタリと決着。6作品が一律優秀作となった昨年とは対照的でした。
最優秀賞となった『星のかおりにつつまれて』は、作者自身が自作を隅々まで愛しんで作り上げたことが伝わってきます。遠くに見える星を、視覚ではなく嗅覚で、ぐっとそばに引き寄せてくれました。物語の構成、レイアウトと視線の誘導、画面の展開など群を抜いていたと思います。絵の表情、文章の小さな癖は、向上の余地がありますが、星のイメージを実感させる、新しい天文絵本のあり方を見せてくれました。
優秀作の『よるのおふろ』は、設定がいい。真っ暗なお風呂から宇宙まで裸で飛び出す自由は、文句なく気持ちいいです。ディテールの作り込みは、これからの課題ですね。
『ちびちゃいのおしゃべり〈てんたい〉』は、天体の知識とあわせ、読者の気持ちに添ったアプローチが新鮮で引き込まれました。せっかく魅力的なキャラクターでおしゃべりも楽しいので、個性と台詞を際立たせられたら、もっと面白くなると思います。
佳作3点には、それぞれの強みと弱点があります。『ほしあかり』は可愛いお話でまとめられていますが、物語や画面に矛盾のほころびが見られます。『雀と飴玉の月』は画力で読者を引きつけ情緒に訴えますが、出口をどこに見出すか? 文にも課題を感じます。『つきのねーねと ちきゅうのぼく』は意欲作。姉弟愛を月と地球に重ねる発想は面白いのですが、生活感とファンタジーの融合の匙加減は難しく、もう少し整理したいですね。
ともあれ、入選おめでとうございます。これを機に、さらに絵本愛と天文愛を深め、絵本創作に打ち込んでください。展示を楽しみにしています。
また、入選には至りませんでしたが、個人的に気になった絵本として、15見開きを生かした『つきよみ』、宇宙語を思わせた『ほしのほし』、くだらなさに魅せられた『てんたいぜったいでっかいやん』と『オデン ミーツ ザ・ユニバース』、小学生の傑作『やさいたちの宇宙旅行』、工夫を続けてほしい『おつきさまってとおいの? れおくんと月のおともだち』を挙げておきます。
みなさん、ご応募ありがとうございました。また来年!
国立天文台 縣 秀彦
今回は全国各地から63作品が集まりました。応募して下さった皆さま、ありがとうございました!12回目を迎えた今回の特徴は、高校生、大学生といった10~20代の方々からの応募が増えたことです。それもみな揃って力作ぞろいで、10代で佳作入選の作者をはじめ第2次、さらに第3次選考にまで残る、「あと、もうひと工夫!」というレベルの作品が多かったのです。絵本作家の卵たち、力のある方々からの応募が増えてきているように感じます。
年齢も10歳未満から70歳以上までと多様性あふれる応募者の皆さんたち。小学生からも複数名、外国人のかたからも複数名、さらには、過去にもこの絵本公募に応募して下さった方々が8名など、絵本に関わることには、年齢も性別も経験も出身地もまったく関係ないなと改めて感じました。
また、天文・宇宙を題材とした科学的な要素を含む絵本が前回よりも増えました。多様な審査員のなかでも、私は特にこういった絵本の科学的な記述をチェックする担当なのですが、優秀作品や佳作に選ばれた名作品のみならず、今回、絵本で科学を伝えようと制作された作品の多くが高いレベルのもので、もうひと頑張り、ちょっとした工夫で絵本として出版可能だと思います。更なるブラッシュアップをぜひご検討ください。
応募作品全般への感想としては、作画デザイン、ストーリー、新規性など絵本評価の要素のうち、すべてで合格点を取ることは難しいものの、そのいずれかが優れており、作者の将来性や可能性を感じさせる作品と数多く出会いました。第一次選考で選外となった作品のほうが少なく、各々の審査員が読んだ際に、何らかの印象を残し2次選考に進んだ作品が多数でした。しかし、残念なことに、その多くの作品はストーリー展開がやや雑で、魅力的かつ個性的なイラストなのにも関わらず、展開が途中から意味不明に落ちいたり、月並みな結論に落ち着いていたりと、絵本制作では11場面または15場面でその世界を見事に完結させられる力が試されているようです。
最優秀作品、優秀作品、佳作に選ばれた6作品のみならず、今回の審査でもあともう一歩で入選という作品に多数出会いました。応募された皆さまは、今回応募された作品をさらにブラシュアップして、よりよい作品に仕上げていただければ嬉しく思います。皆さんが思い描いた唯一無二の世界は、他の誰かが肩代わり出来る世界ではありません。その夢の世界を、時間と空間を超えて、世界中のたくさんの子どもたちや大人たちに鑑賞してもらえたらと願っています。
みたか・子どもと絵本プロジェクト連絡会代表 小谷 奈保子
この小さな公募展は、星と森と絵本の家にある“回廊ギャラリー”に展示する絵本原画を求めている、世間的には案外珍しいパターンの公募展かと思います。入選しても、副賞として絵本化されたり賞金がついたりするわけではない。言ってしまえば、“回廊ギャラリー”という名の廊下にただ展示するだけ。なのに、絵本の家の雰囲気の中の“ここ”に自分の作品があるのが、とっても嬉しいのです!と入選されたほとんどの作者のかたはおっしゃるのです。
そんな雰囲気のある絵本の家には、応募作品申込受付開始日から毎日続々と作品が届きます。それら1作品1作品を読み進めるのは、私にとって毎年の楽しみになっています。今年もまた、小学生(力作!)から70代超えまでの多くの方々が、素敵な作品をお寄せくださいました。
ですが、応募要項・作品規格を満たしていないものも見受けられ、とても残念に思うこともあるのです。せっかく多くの時間をかけ、思いを込めて制作してくださっているのが見てわかるだけに、勿体なさすぎます。
さて、最優秀作品の『星のかおりにつつまれて』は審査員全員一致で選ばれました。情緒豊かで1ページ1ページがそれぞれ絵として鑑賞できるような存在感で、まるで星の香りが本当にただよってくるようでした。
優秀作品『ちびちゃいのおしゃべり〈てんたい〉』は、可愛いキャラクターで展示を楽しくしてくれそうですし、『よるのおふろ』は、不思議な独特なテイストがよりファンタジーに読むことができました。
佳作の『雀と飴玉の月』は、全体的にトーンが暗く、ストーリーもまるで宮沢賢治の物語のように寂しいのですが、私はなぜか惹かれました。原画を見たいです。作者はまだ10代の学生さんとのことで、もう少し絵本のテキストについても勉強され、是非また作品を作って応募していただきたいと思いました。
他の佳作作品も今後に期待したい作品ばかりですし、どの原画も、絵本の家の回廊ギャラリーに展示されたあかつきには、きっと来館者の方々の目を楽しませてくれることと思います。
応募された皆さま、ありがとうございました。受賞された皆さま、おめでとうございました。
おとな絵本ラウンジ代表 絵本勉強家 梅澤 尚子
回を重ねるごとに、絵本の原画展としての認知度が上がり、絵とお話を読ませる絵本の作品として応募してくださるかたが増えたことがとても嬉しいです。一方で、絵本づくりの基本ができていなくて選考から漏れる作品が毎年一定数あるのが、とても残念だと思います。
他に絵本の賞も増えてきています。その中で、この賞は、国立天文台にある三鷹市星と森と絵本の家で展示する作品として、「宇宙」をテーマにした作品を募集してきました。「宇宙」というテーマをどのように扱うかが、応募者の皆さまのオリジナリティを見せるポイントになります。
最優秀賞を受賞されたセキユキナさんの『星のかおりにつつまれて』は、天体に”香り”を組み合わせた作品です。天体に興味を持ってもらう仕掛けとして”香り”というテーマを選んだそうです。表紙には、香りの店のドアとそれに続く小道が描かれ、ページをめくると、まるでそのドアを開けてお話の世界に入っていくような仕掛けになっています。薄いパープルを基調とした画面や素敵なお庭のお家など、セキさんのオリジナリティと楽しみながら作ったという気持ちが伝わってきました。
ただ、お話の前後で女の子に具体的な変化が起こるわけではないので、ストーリーの印象が薄いと感じ、女の子の感情の変化が描かれていたらもっと印象に残る作品になるのではないかと思いました。
入選されたみなさま、おめでとうございます。
展示を楽しみにしています。
三鷹市星と森と絵本の家館長 西村 路香
天体や宇宙をテーマにした、星と森と絵本の家ならではの絵本公募も第12回目となりました。今回も幅広い年代のかたたちから、63作品もの応募をいただきました。前回から引き続き応募いただいたかたや学生など若いかたからの応募が多くいらっしゃったことも、とても嬉しく思っております。ご応募してくださった皆さまに、心より感謝申し上げます。
応募された作品は、どれも作者の想いがこめられていて、1冊1冊すべて大事に読ませていただきました。
今回は残念ながら入選しなかった作品の中にも心に残る作品がたくさんあり、今後もご応募いただきたいと思いました。
入選作に選ばれた6作品は、その中でも特に個性が光っていて、ぜひ星と森と絵本の家の回廊ギャラリーで原画を見てみたい、展示していただきたいと思った作品です。
この入選作の原画展をたくさんの子どもたちや来館者の皆さまにお楽しみいただきたいです。原画展は星と森と絵本の家の開館記念日である7月7日から始まります。
皆さまのご来館をお待ちしております!
第12回三鷹市星と森と絵本の家回廊ギャラリー展示絵本作品公募 募集要項
募集テーマ
「天体」「宇宙」をテーマにした絵本を想定して描かれたもの。フィクションまたはノンフィクションの絵本で、科学絵本、写真絵本などジャンル、手法は問わない。
募集期間
令和7年4月1日~15日
選考委員
- 絵本家 広松由希子氏
- 国立天文台 縣秀彦氏
- みたか・子供と絵本プロジェクト連絡会代表 小谷奈保子氏
- おとな絵本ラウンジ代表 梅澤尚子氏
- 三鷹市星と森と絵本の家 館長
このページの作成・発信部署
〒181-0015 東京都三鷹市大沢二丁目21番3号(国立天文台内)
電話:0422-39-3401
ファクス:0422-39-3402