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地方財政制度に関する要望(H24.10.22)

作成・発信部署:企画部 市長室

公開日:2012年10月23日 最終更新日:2012年10月24日

地方交付税不交付団体の立場からみた地方財政制度に関する課題とその対応への要望

平成24年10月22日
総務大臣 樽床 伸二 様

                                    東京都三鷹市長 清原慶子

  基礎自治体である市町村が、住民ニーズに的確に対応しながら、自主的・自律的に財政運営を行い、諸施策を推進することは、地方自治のあるべき姿であると考えます。
  三鷹市では、市制施行62年目を迎える現在まで、一貫して財政の健全性を維持しながら、市民の皆様のニーズに的確に対応するため、行財政改革を積極的に進めてきました。また、長く地方交付税の「不交付団体」としての立場を堅持してきたところです。しかしながら、リーマンショック等の国際的な社会経済状況の影響によって市税収入が激減する中、社会保障関連経費の増加が続き、経常収支比率の上昇等にあらわれているように、現在の本市の財政状況は非常に厳しいものとなっています。また、東日本大震災を契機とした市民の皆様の防災意識の高まりに対応し、市民の安全で安心した生活を確保するための施策は喫緊の課題です。
  こうした中にあって、今後も安定した財政運営を進めていくためには、一つの自治体の行財政改革の取り組みだけでは限界があります。真の地域主権の確立に向け、地方財政制度全般における財源保障など、今まで以上のきめ細かい財政制度の改善が必要になっています。
  特に、地方交付税不交付団体である三鷹市の立場から下記のように問題提起をさせていただきますので、国における今後の制度改革の検討に当たっては、これらの課題について対応していただくことを要望します。
  どうぞ、よろしくご検討のほどお願いいたします。

                   記

1 不交付団体が急減する状況をもたらしている「地方交付税制度」の改善の必要性
  地方行政における財源保障とともに、自治体間の財源調整を図るための制度として「地方交付税制度」の意義は存在します。しかしながら、現行の地方交付税の算定方式は、自治体の財政力を判断する一つの手法ではあるものの、決して各自治体の財政状況を正確に反映したものとは言えない状況があります。
  こうした実態にもかかわらず、現在の地方財政制度全般は、地方交付税を基礎に構築されています。そこで、「不交付団体」は、一般に「財政力に余裕のある団体」として一律に扱われる傾向にあり、それぞれの団体ごとに様々な財政状況があることが捨象されていると言えます。
  さらに、「不交付団体」は、国や都道府県の財政支援において様々な制限が加えられています。しかも、全国的に「不交付団体」が急減し、圧倒的に少数であることから、その声が国に届きにくいなど、二重・三重に不利な状況にあります。
  そもそも国は、真の地方分権の確立に向け、財政調整を受けずとも、自主的・自律的に財政運営を行うことができる「不交付団体」を増やすことを目指していたはずです。そうした大局的な目標に向かう中、「三位一体の改革」と同時に行われた「住民税のフラット化」において、三鷹市の場合は、地方税の増収以上に国庫補助負担金が削減される結果となりました。とはいえ、この改革によって、「不交付団体」の財源が全国自治体に回るという形での、地方税財源の水平調整が実質的に行われたものと理解し、本市の減収についてはこれを甘受してきたところです。
  ところが、その後、同改革による交付税の削減について、全国の「交付団体」の不満が高まりました。また、「不交付団体」における法人税収の増加によって「財政格差」がさらに広がったとされたことなどから、相対的に財政力のある自治体が、更なる不利益のターゲットとなるという残念な事態が生じました。東京都における「地方法人特別税」などがその例ですが、その後も、「不交付団体」の個別状況を配慮しない財政対策が次々に行われています。
  そして、「不交付団体」の中でも、三鷹市のように住宅都市として「個人住民税」を歳入の根幹とし、法人税収の割合が低い自治体は、特に困難な財政運営を強いられ、毎年度徹底した行財政改革を実施し凌いでいるのが現状です。
  全国市町村で「不交付団体」が全体のわずかに3.1%、54団体(平成24年度)となるまでに減少するという事態の中、すべての自治体をあたかも「交付税措置」に依存する方向に誘導するような現在のあり方は、地域主権改革において大いに問題があるものと考えます。
  したがって、「不交付団体」である三鷹市といたしましては、「地方交付税制度」を中心とした地方財政制度全般について、抜本的な改革に向けた検討を強く要望いたします。

2 いわゆる「一般財源化」を「交付税措置」とすることがもつ問題点を解決する必要性
  国庫補助負担金を伴う事務事業を一般財源化し、自治体が自らの責任においてこれを担うという方向は、地域主権の確立の観点から、歓迎すべきものと考えています。
  しかし、この「一般財源化」が、「交付税措置」という形で行われている現状は、「不交付団体」として甘受しがたいものです。
  たとえば、今般の第2次一括法による「都道府県から市町村への事務移譲」においても、その移譲に係る費用の財源は「交付税措置」とされており、大きな課題を残すものとなっています。
  また、「地方議会議員の年金給付に要する経費の公費負担」についても、国が進める市町村合併によって生じた年金財源の枯渇の責任を地方に求めるものですが、この対応を「交付税措置」としたことは、「不交付団体」を念頭に置かない対応ではないかと疑問を感じています。
  さらに、今後、「法定予防接種」の制度改正に伴う費用負担や、「共通ID(マイナンバー)制度」の導入に係るシステム改修費などが、今までと同様に「交付税措置」とされた場合、三鷹市規模の「不交付団体」はその財源確保のために非常に厳しい財政運営を強いられることとなります。
  こうした国の政策に基づき統一的に地方自治体に義務を課す事業や、セーフティーネットの観点から国民として平等のサービスを求める事業に係る経費については、「ナショナルミニマム」として国が責任をもって財源措置すべきであると考えます。したがって、「国庫補助負担金」あるいは「委託金」として確実に費用負担を行うか、「地方への税源移譲」によって適切に財源保障を行う必要があります。
  仮に時間的制約の中で、「交付税措置」による対応とした場合においても、速やかに上記の確実な財源措置に切り替えるべきと考えます。
  本来、地方自治の強化の観点から行うべき補助金の「一般財源化」が、実際には地方への負担増という事態を招くことのないように、慎重な制度設計を要望いたします。

3 「臨時財政対策債」の段階的な見直しの「不交付団体」への影響と改善の必要性
  三鷹市では、都市再生に向けた建設事業の財源として、あるいは、高金利債の借り換え財源として、これまで「臨時財政対策債」を有効に活用してきました。また、リーマンショック後の急激な市税収入の減少に対し、国による減収補てん対策が何も行われなかったことから、市民サービスの水準を維持しながら安定した財政運営を行うため、さらには、老朽化した都市施設の更新など基本的な建設事業の推進のために、独自の経営改革によって財源の捻出を図りながら、「臨時財政対策債」を活用して対応してきました。
  ところで、この「臨時財政対策債」は、基本的には「交付税の交付団体・不交付団体」に関わらず全団体が発行できるものとして制度が創設され、継続されてきました。しかしながら、今般、発行可能額の算出方法が見直され、「全自治体が発行できる人口基礎方式」から、「不交付団体が発行できない財源不足額基礎方式」へ移行することとされました。
  「不交付団体」の三鷹市としては、先に触れたリーマンショック後の財源不足への対応として、あるいは、東日本大震災後の厳しい市税の状況と、必要とされる防災都市づくりのために、「臨時財政対策債」は、当面欠くことのできない制度であると考えています。
  また、「不交付団体」の数が激減する中で、「交付成り・不交付成り」が流動的なため、発行見込みが不安定となるなど制度的な課題も生じています。
  もちろん、三鷹市としても、行財政改革を積極的に進めるなどの経営努力を続けていますが、昨今は、それでも対応できない一時的かつ大幅な財源不足が生じていることから、「臨時財政対策債」を従来どおりの制度で継続することが望ましいと考えます。ただ、それがどうしても困難な場合には、例えば、「市民税法人税割」等の減収の際に発行が認められている「減収補てん債」について、「個人市民税所得割」の減収が見込まれる場合にも活用できるようにするなどの対応を、是非とも検討していただきたいと要望いたします。このような条件整備が行われなければ、三鷹市をはじめ、現状「不交付団体」を堅持している自治体の財政状況が、さらに悪化することが容易に想定されます。

4 「社会保障費」の地方負担の増大への対応の必要性
  基礎自治体である市町村の役割は、住民生活に密着した財・サービスを、住民ニーズに基づきながら、効率的に配分することです。学校、福祉施設、街路、公園など、受益の及ぶ範囲が一定の地域に限られた地方公共財の提供は、自治体の役割としてふさわしいものであり、その財源を地方税によることは、多くの市民の皆様にご理解いただけるものです。
  一方、「社会保障」、特に「生活保護費」などの「所得再配分」に関する経費については、税制における累進課税とともに制度の整備・運営を全国規模で行うことが求められます。このため、その経費は「年金制度」と同様に国が責任をもって措置すべきであり、自治体が財政負担を行うべきものではないと考えます。
  とはいえ、現行制度では、「生活保護費」の25%は地方負担とされ、さらにこの「地方負担分」が「交付税措置」とされており、受給者の増大に伴い「不交付団体」の負担が増加しています。
  もちろん、住民に最も身近な自治体である市町村は、たとえばケースワーカーの配置や保護費の支給事務、就労支援・自立支援など、直接のサービス提供を行うことは必要ですが、統一的な制度設計と財源負担は国が責任をもって行うべきものであり、現行制度で地方負担分とされているものを含め、全額を国庫負担金で各自治体に交付する仕組みの検討が必要であると考えます。
  このほか、平成24年6月公布の「障害者総合支援法」では、障がい者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するため、サービスの充実等、新たな障がい者保健福祉施策を講じることとしています。一方、「社会保障・税一体改革」においては、地方消費税の使途を、今後、経費の増加が見込まれる「年金、医療、介護、少子化対策」の「社会保障4分野」とすることとし、ここでは障がい者福祉一般についての配慮がなされていません。しかし、近年、本市では、障がい者福祉関連経費についても大幅な増加傾向が見られることから、今後の財源措置について、大いに危惧しているところです。
  いずれにしても、こうした経費を次々と「交付税措置」とすることによって、「不交付団体」が不利となる制度については、早期改善を強く要望いたします。

5 「財政指標」にあらわれる地方財政制度の見直しの必要性
  平成23年度、三鷹市の経常収支比率は、92.1%となりました。それまで80%台後半を維持できていた三鷹市が前年度に引き続き、2年連続の90%台であり、指標上は財政構造の硬直化が進んでいるものとなっています。
  ところで、東京都内の各市においては、昨今、「不交付団体」の経常収支比率が悪化する一方で、「交付団体」の経常収支比率は好転するといった傾向が見られます。これは、「不交付団体」は市税が大幅な減収となる中で自らの経営努力のみによって対応せざるを得ない一方、「交付団体」は「普通交付税」や「臨時財政対策債」によって減収が補てんされることとなり、財政の弾力性が維持される傾向が顕在化するという、いわば「逆転現象」が生じているものです。
  こうした財政指標については、客観的な指標として、国が設定したルールに則るべきことに異論はありません。また、三鷹市では、基本計画において目標数値を示すとともに、財政の透明性を維持する観点から、その結果を市民の皆様に丁寧に説明することとしています。しかしながら、財政指標において、経営努力を行っている「不交付団体」にとって不利益な状況が顕著にあらわれているという現状を踏まえると、地方財政制度全般についての抜本的な検討が必要であるものと考えます。

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この要望書に関するお問い合わせ先
三鷹市企画部財政課
電話0422-45-1151 (内線:2122~2127)

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