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スズメ(雀)スズメ科
作成・発信部署:都市整備部 緑と公園課
公開日:2009年4月13日 最終更新日:2025年7月2日
日本人の生活にとてもなじみ深い野鳥
スズメは私たち日本人にとって、古くから最も身近な野鳥といえるでしょう。舌切雀などの童話にも多く登場します。よく知られているように稲などを食べ荒らす害鳥で、畑の中の「かかし」はスズメから農作物を守るためにつくられるものです。しかし、春から夏にかけて、特に雛を育てる時にはたくさんの毛虫や青虫などを捕食しますので、益鳥でもあります。中国では、1955年頃農作物を荒らすスズメをネズミなどとともに撲滅させる運動を行ったそうですが、スズメがいなくなったかわりに、害虫が急増し、取りやめになったそうです。
「留鳥」として一年中私たちの身近な場所にいるスズメですが、繁殖期が終わって秋口になると当年に生まれた若鳥を中心に、かなりの距離を移動する「渡り」をしていることがわかってきています。寒さが厳しくなると餌を求めて南下するのでしょうが、定着性の強い種であるスズメにとって、遺伝子を分散させる意味があるのかもしれません。
また、例えば高尾山に登るとき、鳥をみながら歩いて行くと、麓の集落のまわりにはスズメがいますが、森のなかに入っていくとスズメに出会うことはなくなります。しばらく歩いて、薬王院の周辺にくるとスズメの姿をみます。また森の中に入ると見かけなくなり、山頂の茶店の近くでは見かけます。このように、スズメは私たち人間の生活と密接につながって暮していて、人間の住まいのないところには住んでいません。
スズメは全長約14.5cmの小鳥で人家の瓦の隙間や、木の洞などに巣を作りますが、シジュウカラ用の巣箱の入口を広げて使うこともあります。
2024年4月に公表された「モニタリングサイト1000(環境省)(20年前から調査が開始され、5年に一度公表される)」によると、ほかの身近な生き物とともにスズメの減少が激しいとのことです。人間の生活に密着しているスズメの減少は、私たちの住宅事情とも関連があるといわれています。コンクリートビルが増え、また、一戸建てでもスレート葺きの屋根が増え、瓦が屋根に使われる住宅がどんどん減っていますが、スズメは瓦の隙間に巣を作ることが多かったのです。2025年の筆者の観察では、交差点の信号機のパイプ部分や配電盤の隙間等に営巣しているのが確認できました。変化する都市の生態系に適応するたくましさを感じました。
また、農薬の使用による昆虫の減少が、餌不足をもたらしているのではないかとも推測されていますし、近年、スズメの天敵である小型の猛禽類ツミ(ワシタカ科)が三鷹周辺などでは増加していることも関係あるのかもしれません。
いずれにしても、身近な野鳥スズメが絶滅危惧種になるかもしれない、というニュースはショッキングです。
5月10日~16日はバードウィークです。「なんだスズメか」といわずに身近な野鳥をよく観察してみてください。水浴びのときなどはとても可愛らしいしぐさをみることができます。きっと癒されますよ。
- 参考文献
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- スズメのお宿は街のなか 都市鳥の適応戦略 唐沢孝一著 中公新書
- フィールドガイド 日本の野鳥 日本野鳥の会