三鷹の水車「しんぐるま」

水車をめぐる生活と暮らし −峯岸清さんについて

峯岸さんの写真新車及び関連の建造物や民具など、「大沢の里 水車経営農家」に関わる貴重な文化財が今も大切に保存され公開されているのは、なによりも旧所有者である峯岸清さんの水車への愛情と保存・公開への努力によるものです。

峯岸さんの写真峯岸家は代々、水車経営農家である。清さんは、回る水車と共に育った。水車(正確には水輪だが)は止めることはない。ゴミ払いや掃除、修理のときは別だが、回しっぱなしなのである。長時間止めておくと、水に浸った部分だけ余分に水分を含み、全体のバランスが崩れ、スムーズに調子良く回転しなくなる。
「水車の音はサーッと、滑らかに滝が落ちるような音です。せきの音はザーッで、大きいんです。杵を動かすとコットン、コトン。篩(ふるい)はガチャコン、ガチャコンですかね」そうした水車の音の中で清さんは育ってきた。 (子供の頃『水車屋ぐらし』より)

しんぐるまの横に立つ峯岸さんの写真止まってからは、無用の長物であろう水車を見守ってきた理由を「叔父が大工でもないのにこれだけのものを作ったんでね。子供のころ、その仕事をそばで見てたし、よく後を守ってくれよとも言ってました。まさか水が止まって水車も止まるとは思っていなかったでしょう。壊して焚き木にしちゃうのも悪いから、もう少し置いてみようというので、ここまできたんです」 (胴搗き米『水車屋ぐらし』より)

略歴

明治43(1910)年
12月16日 東京府北多摩郡三鷹村字大沢617番地(現在の三鷹市大沢6丁目10番15号)に生れる。家業は江戸時代から続く水車経営農家。姉1人、妹2人の4人兄弟の長男として育つ。
大正12(1923)年
3月 西三鷹小学校卒業
4月 東京府立府中農蚕学校入学
大正15(1926)年
3月 東京府立府中農蚕学校卒業
昭和16(1941)年
結婚
昭和17(1942)年
大日本印刷に就職
昭和40(1965)年
定年退職
平成3(1991)年
5月 産業考古学会保存功労賞
10月 東京都功労者表彰
平成6(1994)年
11月 地域文化功労者文部大臣表彰
平成9(1997)年
9月 社団法人日本善行会 金賞

※略歴中の各種表彰は、いずれも全国でも有数の水車の保存と公開に努めた功績が公に認められたものです。