広報みたか2025年8月17日12面
■第41回太宰治賞受賞者 前田 知子さん寄稿文
『フェイスウォッシュ・ネクロマンシー』で第41回太宰治賞を受賞した前田知子(まえだ・ともこ)さん(写真)が、6月22日に太宰ゆかりのスポットを巡った時の思いを寄稿してくださいました。
太宰治賞の授賞式から九日後の、日曜日だった。午前は、三鷹市の職員さん、みたか観光ガイド協会の小谷野さんとともに太宰治ゆかりの場所を巡り、午後は朗読会「太宰を聴く」の冒頭で少しインタビューを受けさせていただくことになっている。まずは「太宰治文学サロン」で、壁一面を占める関連書籍や、筆文字で起こし和綴じされた美しい太宰作品に感心したあと、いよいよ散策へ。
梅雨入りの話はどうなったのだろう、というほどの暑気が続いていて、この日も陽射しが強かった。照りつける中を歩きはじめたとき、ガイド役の小谷野さんが「塩分は摂れていますか?」と個包装のタブレットを出してくれた。やさしさが沁みる。授賞式の日はおもに出版関係の方々から名刺をいただいて嬉しかった反面、でもまだ私の作品をお読みになってはいないのだよな、がっかりさせてしまったらどうしようと思った。普段はレジに立っている自分が金屏風の前で写真撮影したりして、状況に体がついていかないような日々を送っていたから、ふいに差し出された塩分タブレットが、なんだかすごく無垢だった。
「風の散歩道」に向かい、玉川上水に沿って歩いて行く。野川家跡。太宰の故郷の玉鹿石。
かつてニューヨークパンクの女王と呼ばれたパティ・スミスが今年の四月、東京都現代美術館で発表したプログラムに合わせて来日したらしい。太宰の作品を愛するその人が、現代音楽の人たちと取り組むコラボ作品の素材として、玉川上水の水中の音を録音していったということをネットの記事で読んでいた。そんなわけで、「パティ・スミスの来た場所に来ている!」という方向からも感動した。
長期休館中の山本有三記念館で庭を鑑賞したあとは車での移動となる。太宰治賞の最終選考会場にもなっている「みたか井心亭」の前を通って、禅林寺へ。墓石の前に立ち、「(今年は)太宰治さんが入水された十三日に華やかな授賞式をしていただきました、ちょっとだけすみませんでした、頑張ります」と念じつつ手を合わせた。
お寺で行き会った散策中の方も、午後、芸術文化センターのステージに出たとき拍手で迎えて下さった客席の皆様も、「本年の太宰治賞の……」と紹介される私になんとも言えない笑顔を向けてくださった。どうしてなのだろうとずっと思っていたけれど、もしかしたらあれは、太宰治賞という賞に向けられた笑顔なのかもしれない。無二の作家の名前と過去に受賞された方々の活躍とに向けられた、この立ち位置でしか見ることのできない笑顔だったのではないか。そう気づいたとき私は、受賞の決定以来たぶんはじめて、自分が受け取ったものの大きさ、尊さを実感したのだと思う。
太宰は三鷹市に住むより三年ほど前、千葉県の船橋市にも住んでいる。庭の夾竹桃への愛着について『十五年間』にも書かれており、三鷹時代とはまた違う太宰の姿があるようだ。私の居所からもそう遠くないから、涼しい季節になったら船橋のゆかりの地もまた、巡ってみたいと思っている。
■第42回太宰治賞 作品募集
[問]同賞事務局((株)筑摩書房内)TEL03-5687-2680
既成の枠にとらわれない作品のご応募をお待ちしております。受賞者には、記念品と副賞として100万円が贈られます。
太宰治賞とは
太宰治賞は、昭和39年に(株)筑摩書房が創設した小説の公募新人賞で、吉村昭など多くの著名作家を世に輩出してきました。第14回を最後に中断していましたが、三鷹になじみの深い太宰治の没後50年(平成10年)を機に、市が同社に再開を呼び掛け、共同主催の形で復活しました。
選考委員
荒川洋治、奥泉光、中島京子、津村記久子(敬称略)
応募規定
●未発表小説に限る
●1人1〜2篇
●枚数は400字詰め原稿用紙50枚〜300枚
申込方法
12月10日(水)(消印有効)までに同社[HP]で募集要項を確認のうえ、「〒111-8755東京都台東区蔵前2-5-3 筑摩書房内太宰治賞係」へ
■10月12日(日曜日)開催! みたかスポーツフェスティバル 参加者募集
[問]スポーツ推進課TEL0422-29-9863
ひろみちお兄さんの親子体操教室
第10代体操のお兄さんの佐藤弘道さん(写真)と一緒に、親子で体操を楽しみます。笑顔いっぱいで心も身体も元気になるひとときを、親子で触れ合いながら過ごしませんか。
[日]午前10時〜11時30分 [人]市内の3〜5歳のお子さん(年少〜年長)と保護者200組 [所]SUBARU総合スポーツセンター [物]動きやすい服装、タオル、室内履き、靴袋 [申]9月7日(日)までに元気創造プラザ講座申込システム(QRコード)へ(申込多数の場合は抽選)
トライアスロン競技の3種目を体験しよう!
トップアスリートに教わりながら、「スイム」「バイク」「ラン」の3種目を短い距離で体験します。部門別に計測を行い、総合タイムを競い合います。
[日]午前9時15分〜午後1時30分(雨天決行)
[人]9歳未満の部=10人、9〜13歳未満の部=20人、13歳以上の部=20人 [所]三鷹中央防災公園・元気創造プラザ [講]トライアスロン女子オリンピアンの加藤友里恵さん(写真)ほか [物]水着、水泳帽、ゴーグル、タオル、室内履き(靴底がアメ色、白色、無地) [申]9月7日までに市[HP](QRコード)へ(申込多数の場合は抽選)
市外局番「0422」は省略。 【主】主催者 【日】日時・期間 【人】対象・定員 【所】場所・会場 【講】講師 【¥】費用(記載のないものは無料) 【物】持ち物 【申】申込方法 【問】問い合わせ 【保育】保育あり 【手話】手話(要約筆記)あり