広報みたか2026年9月6日16面
■第42回太宰治賞受賞者 こがわゆうじろうさん 寄稿文
『タロー・ジ・エンド』で第42回太宰治賞を受賞した、こがわ ゆうじろうさん(写真)が、6月20日に太宰ゆかりのスポットを巡った時の思いを寄稿してくださいました。
これを書いているのは八月十日で、受賞の報せから三カ月、授賞式から二カ月のこと。なにを書こうかずっと迷っていて、六月二十日に三鷹市の方々に市内を案内してもらってから、さらに一カ月後の七月二十二日、もう一度三鷹市を訪れた。六月二十日に案内して頂いた日は大雨だったため、ほとんどの場所を車の窓から覗くしかなかったのだ。
七月二十二日は一日かけて三鷹市を散策し、夜には三鷹駅から少し歩いた場所にある個人書店UNIT'Eで、安藤宏さんと宮崎智之さんによる「近代文学にとって『太宰治』とは何か」というトークイベントも聴講した。三鷹市はかなり文化的な街という感覚はこれで確かなものになったように思う。
そしてそれから、筑摩書房と三鷹市が共催する太宰治賞についても考えた。授賞式で三鷹市長の河村孝さんと筑摩書房の増田社長のスピーチを拝聴しながら、太宰治賞は出版社だけでやる新人賞ではなく、自治体との共催なんだと改めて知り、それがいかに難しいことなのかを某市役所に勤める友人にも聞いた。「SNS出身の作家です」という表明だけはしていたものの、出版社と自治体共催の新人賞出身ということは考えていなかったのを反省した。
昨今は関わる人の数ばかりが増え、結びつきは弱くなっているように思える。昔ほどしがらみがないという意味では良いことだろうけれど、思わぬ形で簡単に縁が切れてしまうSNSとは違う、「地元」というものが関係する賞を受けた意味は日々大きくなっていくだろう。特になにを言われたわけでもないが、これからは三鷹市が共催する太宰治賞の作家としてもう少し発言に自覚を持たなければいけないなと、気持ちを引き締めてやっていきたい。それは特定の人を故意に中傷しない、侮辱しないというごく当たり前のことで、何も太宰治賞出身の作家だけが心掛けることではないと思うが、それにしてもやはりそういった決意を新たにしないと、これまでのように無責任な発言が続いてしまう。
こういった常識、それに約束を大切にする姿勢は、太宰治よりもむしろ、太宰治賞の第二回受賞者である吉村昭から学ぶべきことだと感じている。
僕が太宰治賞に投稿していた理由は吉村昭の後輩になりたいというもので、それは吉村昭の作品が好きだからというだけでなく、彼の「書き始めたら一日三枚必ず書く。原稿は落とさない」という姿勢に、普通ではない精神力を感じているからでもあった。吉村昭自身は「小心者だから締め切りを守っている」と言っているが、僕は彼のそういった、決められたことを必ず実行するという意志の固さについて、小心者だからではなく、関わっている人たちにも生活があるということをよく知っているからだと推理している。
まだ新人賞を受けたばかりの作家ではありますが、これからは個人としてSNSを楽しむだけでなく、三鷹市から作家人生がはじまったことも忘れないようにします。
■新企画展 開館30周年 建物の記録と記憶―三鷹市山本有三記念館、100年の時を経て
[問]同館TEL0422-42-6233
開館30周年と、建物が大正15(1926)年に登記されてから100年という節目を迎えることを記念し、三鷹市指定有形文化財である建物の変遷を、残された記録や関係者の記憶をたどりながら解説します。
[日]9月12日(土)〜令和9年3月7日(日)午前9時30分〜午後5時((休)月曜日〈休日の場合は開館し、休日を除く翌日と翌々日を休館〉) [所]同館 [¥]300円(入館料。中学生以下・障害者手帳をお持ちの方は無料) [申]期間中会場へ
■三鷹ネットワーク大学共催 企画展関連講演会 三鷹市の文化財行政と山本有三記念館の評価
法政大学名誉教授の馬場憲一さん(写真)にお話しいただきます。
[日]10月11日(日)午後2時〜3時30分 [人]40人 [所]三鷹ネットワーク大学 [申]申し込みフォーム(QRコード)、または代表者の必要事項(9面参照)・参加者氏名(2人まで)・何を見て応募したかを往復はがきで[郵]「〒181-0013下連雀2-12-27山本有三記念館」へ(1人1通。先着制)
■第43回太宰治賞作品募集
既成の枠にとらわれない作品のご応募をお待ちしています。受賞者には、記念品と副賞として100万円が贈られます。
※応募規程など、詳しくは同社[HP]をご覧ください。
[申]12月10日(木)(消印有効)までに400字詰め原稿用紙50〜300枚にまとめた未発表小説1〜2篇を[郵]「〒111-8755台東区蔵前2-5-3筑摩書房内太宰治賞係」へ
◆太宰治賞とは
同賞は、昭和39年に同社が創設した小説の公募新人賞で、吉村昭など多くの著名作家を世に輩出してきました。第14回を最後に中断していましたが、三鷹になじみの深い太宰治の没後50年(平成10年)を機に、市が再開を呼び掛け、共同主催の形で復活しました。
◆選考委員(敬称略)
荒川洋治、奥泉光、中島京子、津村記久子
市外局番「0422」は省略。 【主】主催者 【日】日時・期間 【人】対象・定員 【所】場所・会場 【講】講師 【¥】費用(記載のないものは無料) 【物】持ち物 【申】申込方法 【問】問い合わせ 【保育】保育あり 【手話】手話(要約筆記)あり
