緑と水の公園都市 三鷹市
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広報みたか2021年7月18日12面

■太宰治賞受賞者 山家望さん寄稿文

 『birth』で第37回太宰治賞を受賞した山家望(やまいえ・のぞみ)さん(写真)が、6月15日に行われた太宰治賞贈呈式に合わせて三鷹を訪れた時の思いを寄稿してくださいました。

 太宰の入水地とされる玉鹿石のある地点、玉川上水の水がコンクリートに激突してささやかな滝のように落下しているところを柵越しに覗き込むと、とても死に切れる場所とは思えない。『乞食学生』に太宰が書いたように〈ゆるゆると流れて〉いる水面は立ち木の葉叢の隙間を縫うように届く陽を穏やかに反射させていた。太宰の記述に反して当時の水流は轟々と形容するにふさわしかったと教えてくださったみたか観光ガイド協会の小谷野さん曰く当時はもちろん街灯などもないから真っ暗闇の中を太宰は富栄の手を引いて身を浸す場所へ向かったのだという。灯なども持たずに歩いただろうが、灯があれば草叢から息を潜めて見つめる動物の目をちらりと反射させたかもしれない。夜行性を中心に網膜を通過した光を反射させるための層を持っている動物がおり、これによって増幅させた光を網膜に返すことで僅かな光があればじゅうぶんに動き回ることができるのだそうで、この人間にはない反射層をタペタムという。

 タペタムは人を驚かす。暗闇の中に突如燦めく二つの目が現れると人は瞬間身体を萎縮させ、呆気にとられる。少しの灯があり、その視線に気づくことができていれば、太宰が立ち止まることもあったかもしれない。

 少年時代、私は絵を習うために玉川上水沿いを三鷹に通っており、自転車で四十分弱の道程で狸と鉢合うことがあった。遅い時間まで絵を描いて帰る日々、太宰の時代に程遠いとはいえ暗闇を自転車のライトを頼りに走らせながら横目に流れる玉川上水脇の緑地は、自然ではないものの開削からの年月を思えばまったくの人工物とも言いきれない鬱蒼とした景色で、淡い街灯や時折過ぎ去っていく自動車のヘッドライトに濃淡のついた暗闇に様々な植物のシルエットを浮かび上がらせていた。そして、いつもまったく予期しないタイミングで狸は現れた。気配など何もなく青白い光がふたつ、暗い濃淡のうちから放たれこちらに向けられる。ぎくりとしてブレーキに手をかけるより早く暗闇にとって返すか私の眼の前を横切るかしてあっという間に姿を消す。なんとか知覚するシルエットは犬には小さく猫にしては存在感があり、いつもハッとさせられ緊張を強いられた。犬や猫などは目にしたところで驚きはなく、いってしまえばいつでも見かける心の準備ができているが、まさか狸などいるとも思わず、いつだって見る準備も見られる準備もできていない。だからいつも狸の登場は私を驚かせた。私の生活する空間にはいつでも意識の外から突如闖入してくる、見る/見られる他者があるのだという感覚を狸とその生息地である玉川上水は教えてくれた。

 自転車で日々往復する玉川上水沿いのどこからどこまでが三鷹市にあたるのか私は明確に認識していなかったものの、玉川上水沿いを走るのは常に三鷹に向かうためであり、そういう意味では四十分弱のあの道のりは私にとってまるごと三鷹だった。作家としての土台を醸成したアトリエを与えてくれた三鷹が、常に手触りのある他者性の実感を与えてくれた三鷹が、私のものづくりの原点なのかもしれない。

※写真はPDFをご覧ください。


■大沢の里古民家企画展「家(うち)は内(うち)?―異界とつながる古民家展」

[問]生涯学習課TEL内線2921

 昔の民家には、家の内側か外側かあいまいな空間がたくさんありました。例えば、縁側は日中外に開放され、夜雨戸を閉めると室内の一部になります。そのようなあいまいな場所は異界との境界と考えられ、妖怪が現れるという伝承があります。企画展では古民家の構造や、家と関係が深い妖怪・魔よけなどを紹介します。

[日]8月21日(土)〜11月29日(月)午前10時〜午後5時(11月は午後4時まで)
[所]大沢の里古民家(大沢2-17-3)
[¥]200円(入館料。中学生以下無料)
[申]期間中同施設へ

7月24日(土)・25日(日)は臨時休館します
 東京2020オリンピック自転車ロードレース競技の開催に伴い、同施設を休館します。

※画像はPDFをご覧ください。


■天文・科学情報スペース企画展「体験しよう!光の魔法ミュージアム」

[所][問]同施設(下連雀3-28-20三鷹中央ビル1階)TEL26-9951

 色の見え方は人によって異なります。懐中電灯を片手に、特殊なランプで照らされた会場内を回りながら、色覚の多様性を学ぶ体験型の展示です。

[日]7月24日(土)〜9月5日(日)午前11時〜午後6時30分(月・火曜日、祝日休館)
[申]期間中会場へ


■オンライン講座「市民講師としての話し方やコミュニケーションを学ぶ」

生涯学習センター

[問]同センターTEL49-2521

 皆さんの知識や技能を地域に生かす、ボランティアの「市民講師」養成講座です。オンライン講座を開催する時の「伝わる話し方とコミュニケーション」や「講座の計画を立てる際のポイント」などを学びます。

[日]9月8日〜10月13日の水曜日午後1時30分〜3時30分(全6回)
[人]全回参加できる在学・在勤を含む16歳以上の市民10人
[所]オンライン会議アプリ「Zoom」
[講]元NHKアナウンサーで(株)メリディアンプロモーション代表取締役の牛窪万里子さん(写真上)、元NHKアナウンサーの石井麻由子さん(写真下)
[申]8月16日(月)までに[HP]https://www.kouza.mitakagenki-plaza.jp/(元気創造プラザ講座申込システム)へ(申込多数の場合は抽選)
※受講生の顔が映るよう、ビデオ(カメラ)をオンにしてご参加ください。講座は録画します。

※写真はPDFをご覧ください。


※詳細はPDFをご覧ください。


市外局番「0422」は省略。 【主】主催者 【日】日時・期間 【人】対象・定員 【所】場所・会場 【講】講師 【¥】費用 【物】持ち物 【申】申込方法 【問】問い合わせ 【保育】保育あり 【手話】手話・要約筆記あり

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