緑と水の公園都市 三鷹市
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広報みたか2018年1月1日4面

■新春対談「大好きな絵本、まち、人―愛すべき“普通”なものの魅力」

 物語をつくること、絵を描くこと、音楽を作ること、食べること。さまざまな活動に自然体で取り組み、どの分野でもユニークな才能を発揮し続ける、久住昌之さん。生まれ育ち、今なお暮らしている三鷹の良さとは、そして多彩な創作活動の原点とは――。開館から10年を迎える「三鷹市星と森と絵本の家」で行われた今年の新春対談では、市長との笑いの絶えない会話の中から、久住作品の背景にある想いや創作の秘密が浮かび上がってきました。

2018年新春対談
久住 昌之さん(漫画家、絵本作家、エッセイスト ほか)×清原 慶子三鷹市長

生まれてからずっと住み続ける久住さんにとっての「三鷹」
市長 久住さんは、三鷹のお生まれで三鷹育ち、そして今も三鷹にお住まいです。久住さんにとって、三鷹市とはどのような存在ですか。

久住 一度も三鷹を出たことがないんです。第七小学校から第四中学校というコースです。小学生のとき校舎が木造から鉄筋に建て替えになって、3階から東京タワーや霞が関ビルが見えたのを覚えています。当時は高い建物がなくて、そのころからは街並みも変わりました。

市長 現在は建物の高さを制限していますが、それでも昔に比べたら建物の高層化は進みました。昔は富士山がよく見えたのに、という声も聞きますね。

久住 僕にとって三鷹はずっと愛着のあるまちなんです。人によっては、隣の吉祥寺の方がいろいろなお店がある、なんて言うかもしれません。でも、そこが三鷹の良さだと思うんです。にぎやかさはお隣に任せて、その脇でちょっと静かに。でも、歩くと良い店や良い森が見つかったりする。昔、僕らが走り回ったような原っぱこそないけれど、大きな公園がありますしね。

市長 久住さんには、以前、市制施行60周年を記念して刊行した『月刊 東京人』増刊号で「三鷹発、宇宙への旅」という特集が組まれたときに、「大沢の里を歩く。」というルポを寄稿していただきました。また、昨年4月に元気創造プラザに生涯学習センターがオープンした際には、「ふらっと訪ねるまち歩き―三鷹編」と題した記念講演をしていただきました。講演後には歌まで披露していただいて、たくさんのお客様に喜んでいただけました。

漫画、絵本、エッセー、音楽…多彩な仕事の原点とは
久住 今回、「星と森と絵本の家」を訪れて、うれしい再会がありました。『せいめいのれきし』という絵本です。初めて手にしたのは6歳ごろで、当時は大好きな恐竜のページだけを見ていたんですが、中学のとき、ほかのページや絵の中にたくさんある仕掛けの面白さに気づきました。さらに、地球の誕生から続く生命の歴史が、「この後はあなたのお話です」と最後は自分の人生につながる内容の深さや、表現の多様さに感動を覚えたのは大学生になってからです。この本の魅力を十数年かけて発見してきたことは、僕の創作の原点だと思います。

市長 絵本、漫画、エッセーと、久住さんは本当に多才でいらっしゃいますが、絵や文章などを創作するお仕事を志されたのは、いつごろなんですか。

久住 大学時代に「美學校」というアート系の学校で、故・赤瀬川原平さんの教えを受けていて、在学中からイラストや音楽などをやり始めていました。また、そこで出会った泉晴紀さんが絵、僕が原作を担当して、コンビで漫画家デビューもしました。僕は子どものころから、誰かと組んでものを創るのが好きだったようで、小学校でもクラスメートと二人で交換日記のようにして、物語を合作したことがあります。

市長 誰かと組むことで、お互いの良さが引き出されるのでしょうね。

久住 「一人では恥ずかしいけど二人だとできる」というのはあるかもしれませんね。弟(漫画家・絵本作家の久住卓也さん)とも組んで漫画や絵本を出しているんですよ。

市長 音楽活動もされていますが、音楽を始められたきっかけは。

久住 フォークソング全盛の中学1年のときにギターを手にしたのが最初です。中学校に音楽集会という催しがあって、生徒が自分で曲を作って、選ばれるとみんなでその曲を歌うんです。そのとき自分が作った曲が選ばれて、とてもうれしかった思い出があります。今でも子ども向けの曲も作っていて、NHKの「おかあさんといっしょ」で放送している『おもちゃのブルース』という曲では演奏もしました。

市長 『おもちゃのブルース』、知っています!孫と一緒に歌いながら聞いています。

久住・市長 (二人で一緒に『おもちゃのブルース』を歌いだす)

市長 おもちゃが片付けてもらえなくて悲しがっている切なさがなんとも言えない曲ですよね。この歌を聞くと孫が自然におもちゃを片付けてくれるので、母親である娘にも好評です。

普通のことを丹念に続けるその素晴らしさを描きたい
市長 久住さんの作品の魅力って、普通の人々が、日常的な感覚で共感できることを描いているところではないかと思うのですが。

久住 そうですね。『孤独のグルメ』にしても、特別なものは何も出てきません。僕は、普通のラーメンや普通のカレーライスが好きなんです。「グルメ」って、たくさんの人に評価された食べ物を知っている人ですよね。でも、『孤独のグルメ』は、他人は関係なく「俺がうまければうまい」の世界。だからタイトルに「孤独の」って付いているんです。

市長 高級とか特別ということではない、普通のものが持つ魅力ですよね。

久住 お店も30年とか地道に続いているところが好きです。高級で特別な店は、一度は人を驚かすことができるでしょうけど、普通のまま長年続いている店には何度も足を運びたくなるような、しみじみとした良さがあるんです。

市長 私の実家は酒屋だったのですが、やはり父が「繰り返し来て同じものを買ってくださるお得意さんがいるから、うちは商売を続けていられる」と、いつも感謝していましたね。

久住 本にもしたんですが、以前、三鷹に「江ぐち」というラーメン屋さんがあって、そこで一番長く働いていた方が「ラーメン屋なんて儲かる商売じゃねぇんですよ」って笑ってたのが、とても格好良かったんです。自分もそういう心意気でやっていきたいな…と思います。

市長 普通のことを、きちんと丁寧に続けるのは大切なことですよね。それはまちづくりについても同じです。三鷹市は今年で市制施行68周年を迎えます。人口は18万6千人を超えており、毎年増えています。現在、「高環境・高福祉」をテーマに、住みやすい環境と人々が支え合う安全・安心のまちづくりを進めているところです。市民のみなさんの普通の暮らしが成り立つように、市民の声をお聞きしながら、日々の仕事を地道に丁寧にしていくことが大事だと思っています。

年頭に伝えたい!大根の偉さ、本の大切さ
市長 新年のお仕事についてお伺いできますか。

久住 『大根はエライ』という絵本の単行本がこの1月に出ます。大根は、いろいろな料理に使われて、相手の味を引き立てながら自分もおいしくなる。なのに、「大根はナンバーワンと言ってもいいんじゃないか」と言うと、「いや、そんなのいいよ…」って答えそうな控えめな感じ。そこが偉いと思うんです。

市長 確かにそうですね!(笑)。告白しますと、私は高齢の母や娘が作ってくれる大根のお味噌汁が大好物なんです。

久住 告白なんて言わず、「大根の味噌汁が好き」って堂々と宣言すればいいのに(笑)。でも、なんとなく気恥ずかしい感じがするのも、大根ならではですね。

市長 大根には、ちょっと申し訳なかったかしら。でも、三鷹にも大根を作っている方がいらっしゃるし、農業公園で行う大根の種まき講習会は大好評で、収穫のときはたくさんの人が集まります。三鷹では、大根は主役級です。

久住 今年はその後、弟との合作で『古本屋台』という漫画も出します。これは、夜更けに古本を売りにくる屋台の話で、お客に100円で焼酎のお湯割りを一杯だけ飲ませてくれるんです。それで、もう一杯もらおうとすると、「うちは飲み屋じゃないんだから」って断られる。そんな渋い屋台の漫画です。

市長 面白そうですね。実は、昨年4月に移動図書館「ひまわり号」の車両を新調して、巡回ステーションの数や頻度も増やしました。それが、親子連れからご長寿の方まで、とても人気なんですよ。

久住 やっぱり本は手で触って読んでほしいですよね。パソコンでも読める時代ですが、本という形あるもので手にとってほしい。

市長 今の子どもたちは、生まれたときからスマートフォンやパソコンがある環境にいるわけですが、ぜひ絵本を身近に過ごしてほしいですね。ドキドキしながらページをめくったり、好きなページを繰り返し読んだりすることで、久住さんにとっての『せいめいのれきし』のような、大切な一冊になりますから。

久住 僕も、頑張って絵本を創っていきたいです。「絵本なんて儲かる商売じゃねぇんですよ」って言いながら(笑)。

市長 ぜひとも、よろしくお願いします!本日はありがとうございました。

清原 慶子市長 Keiko Kiyohara
 昭和26(1951)年、東京都生まれ。慶應義塾大学、同大学大学院で学んだ後、杏林大学・国際基督教大学非常勤講師、常磐大学人間科学部専任講師、ルーテル学院大学文学部教授、東京工科大学メディア学部教授・学部長を経て、平成15(2003)年4月に第6代三鷹市長に就任(現在4期目)。「参加と協働」「危機管理」「行財政改革」を政策の基礎に置き、「都市再生」「コミュニティ創生」を最重点とした「高環境・高福祉のまちづくり」を推進している。全国市長会副会長、東京都市長会副会長、内閣官房郵政民営化委員会や総務省統計委員会、文部科学省中央教育審議会の委員を務めるほか、三鷹の森ジブリ美術館の管理・運営を行う公益財団法人徳間記念アニメーション文化財団の副理事長を務める。

久住 昌之さん Masayuki Kusumi
 昭和33(1958)年、三鷹市生まれ。三鷹市在住。大学在学中から美術や音楽活動に興味を持ち、美術・音楽・メディア表現の学校である「美學校」に通い、赤瀬川原平氏に師事。現在は、漫画原作者、漫画家、絵本作家、エッセイスト、ミュージシャン、装丁家など多方面で活躍する。代表作は、海外でも翻訳出版され、テレビドラマとしてシリーズ化もされている、久住氏原作・谷口ジロー氏作画による漫画『孤独のグルメ』(1994年)、第45回文藝春秋漫画賞を受賞した、実弟の久住卓也氏との共著による漫画『中学生日記』(1998年)など。ドラマ版『孤独のグルメ』の各話に原作者本人として登場するほか、かつてバラエティー番組『タモリ倶楽部』の人気コーナーでレギュラーを務めるなど、テレビ出演も多い。

※写真はPDFをご覧ください。


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