緑と水の公園都市 三鷹市
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広報みたか2016年1月1日4面

■2016年新春座談会「学びが生む、誰もが輝けるまち」

 大学などの教育・研究機関と積極的に連携を進めてきた三鷹市では、「知」
の力がまちづくりに大きな役割を果たしています。今回は、市内にキャンパスを置く「杏林大学」「国際基督教大学」「ルーテル学院大学」の学長をお招きし、三鷹ならではの地域と大学の関わり、教育理念、新年の抱負などをお聞きしました。

清原 慶子市長
Keiko Kiyohara
東京都生まれ。慶應義塾大学、同大学大学院卒業後、杏林大学・国際基督教大学非常勤講師、ルーテル学院大学文学部教授、東京工科大学メディア学部教授・学部長を経て、平成15(2003)年4月に第6代三鷹市長に就任(現在4期目)。「参加と協働」「危機管理」「行財政改革」を市政の基礎とし、「都市再生」「コミュニティ創生」を最重点とした高環境・高福祉のまちづくりを推進している。

杏林大学 学長
跡見 裕さん

Yutaka Atomi
愛知県生まれ。東京大学医学部卒業後、外科医の道を志し、同大学医学部第一外科に入り、消化器外科、特に当時未知の領域とされた「膵・胆道の臨床・研究」に励む。その後、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の客員研究員、東京大学講師などを経て、平成4(1992)年、杏林大学医学部第一外科教授となる。平成16(2004)年より医学部長、平成22(2010)年より学長を務める。

国際基督教大学 学長
日比谷 潤子さん

Junko Hibiya
東京都生まれ。上智大学外国語学部フランス語学科卒業。同大学大学院外国語学研究科博士前期課程修了。ペンシルヴェニア大学大学院言語学博士。慶應義塾大学国際センター助教授、ダートマス大学客員准教授、国際基督教大学教養学部語学科教授、学務副学長などを経て、平成24(2012)年より学長を務める。専門は社会言語学。現在、中央教育審議会委員などを務める。

ルーテル学院大学 学長
江藤 直純さん

Naozumi Eto
熊本県生まれ。一橋大学社会学部卒業。日本ルーテル神学大学(現ルーテル学院大学)神学部・同神学校卒業。立教大学大学院文学研究科組織神学専攻修士課程修了。シカゴルーテル神学校大学院博士課程修了(神学博士)。昭和51(1976)年に日本福音ルーテル教会牧師に。その後、日本ルーテル神学大学助教授などを経て、平成4(1992)年、同大学教授。平成26(2014)年より学長を務める。

※写真はPDFをご覧ください。

地域と大学の結びつきが今、生み出すもの
市長 本日学長にお集まりいただいた三つの大学には、昨年、開設10周年を迎えた「三鷹ネットワーク大学」での連携をはじめ、地域やまちづくりのさまざまな場で大きな力になっていただいています。学生のみなさんの活躍はもちろん、教員の方々には市の審議会や市民会議などの委員となっていただいており、本当に感謝しています。さて、現在、グローバル(国際的)な視点とローカル(地域社会)な視点の融合を図ることの重要性が注目されていますが、その中で地域と大学の関係についてどのようにお考えですか。

跡見 杏林大学は昭和41(1966)年に三鷹市にキャンパスを置いて今年で50周年になります。4年前に文部科学省の「経済社会の発展を牽引(けんいん)するグローバル人材育成支援事業」と3年前に「地(知)の拠点整備事業」に採択されて、目下、グローバルとローカルの二つの事業に取り組んでいるところです。その一環として、全学部の1年生に必修科目「地域と大学」を設定して、市の職員の方にも講師をお願いしています。また、本学は市内にある付属病院での医療のイメージが強いかと思いますが、今年新たに保健学部、総合政策学部、外国語学部が八王子市から三鷹市へ「井の頭キャンパス」として移転してきます。4学部が三鷹に集結するのを機に、さらに広い分野で地域に貢献したいと考えています。

日比谷 国際基督教大学は昭和28(1953)年に三鷹市で開学し、地域社会を学習の場とするサービス・ラーニング・プログラムのほか、生涯学習講座や市と提携した公開講座を数多く開催するなど、地域との結びつきを深めています。世界に目を向けている学生が本学には多いのですが、世界で活躍するためには、自分の暮らす地域にまず目を向け、地域の課題に気付いて行動することが大切だと思っています。

江藤 ルーテル学院大学は昭和44(1969)年に中野区から三鷹市へキャンパスを移転し、3年後の平成31(2019)年に、移転してから50周年を迎えます。これまで、市民聴講生の受け入れなど、大学の「知」を地域に提供する一方で、市民のみなさんに大学の教育を支えていただいているという実感があります。たとえば、本学では障がいのある学生の受け入れに当たって、三鷹市の点字サークルや手話通訳サークルなどにサポートしていただいています。こうした対応は大学だけでは難しく、市民のみなさんのお力添えがあってこそですので、大変感謝しています。

市長 杏林大学が進める「地(知)の拠点整備事業」では、いかにご高齢の皆様がいきいきと暮らせるかということについて市と共同研究をしていますし、国際基督教大学には、長年にわたり地域の専門講座を市の職員と共に続けていただいています。さらにルーテル学院大学には、7年目を迎えた「地域福祉ファシリテーター養成講座」など、主に福祉の分野でご協力をいただいています。それぞれの大学との協働のプロセスや成果が「三鷹らしさ」につながっていると思います。また、私自身もかつて、三つの大学全てで教壇に立たせていただいたというご縁があり、その際に、大学教育にとって学長の教育理念はとても大切だと感じました。

教育を通して伝えたいこと実践してほしいこと
市長 ここで改めて、みなさんが教育者として日頃から大切にされている、教育への想いをお聞かせください。

江藤 福祉とは、行政だけが担うものではなく、あるいは個人が一人で行うものでもなく、みんなが助け合う「互助」「共助」が大切です。そのためには、人の役に立つことに喜びを感じられる人間性を育むこと、そして高度で専門的な知識・技術を身に付けることが重要だと思います。こうした人間性の醸成と専門教育を、キリスト教の理念に基づいてやっていくことが私たちの使命だと思っています。

日比谷 本学は開学時から文理の区別なく幅広く学んだ後、専門性を深めるリベラルアーツ教育を徹底しており、教養学部の中に30を超える専修分野があり、多様な組み合わせによる履修も可能です。そのため、哲学を専攻する学生や物理学を専攻する学生が共に学んでおり、そうした多様な学生と教員が交流することで、文理の融合や学際的な研究が促されていると思います。

市長 杏林大学では、4学部体制が三鷹市で実現することによって教育理念の実現に何かしら影響があるでしょうか。

跡見 4学部体制になっても、教育理念そのものに変化はありません。学生との対話の中でよく言うのですが、ダイバーシティ(多様性)を認めること。すなわち、単に「いろいろある」だけで終わらせず、それぞれをきちんと見つめて尊重することが今後も大切だと思います。現在、本学の医学部生は救急車に乗って走り回り、保健学部生は介護施設で実習し、また、外国語学部生は小・中学校で英語ボランティアとして教えています。学生たちは社会の多様性を実体験し、それをどのように生かすのかを学んでいるのです。

市長 「ダイバーシティ」という言葉が出ましたが、みなさんのお話を伺っていると、この言葉が一つのキーワードのようですね。行政にとっても多様性はとても重要で、多世代の交流や多職種の連携により、文字通り多様な市民の皆様が出会い、交流することが、まちづくりのための大きな力になっていると思います。

特色を生かして飛躍の年に学長が語る新年の抱負
市長 年も改まり、今年をどのような年にされたいか、お聞かせいただけますか。

日比谷 今年は新たに二つのプランを進めています。一つ目は、キャンパス内の寮の建て替えで、合計で320名を収容する新しい寮が2棟、来年の4月に誕生します。通学生も参加する教育プログラムを行うスペースも設けるこの寮を、順調にスタートさせたいですね。二つ目は、「ユニヴァーサル・アドミッションズ」という新たな入試制度の枠組みを設定し、平成29(2017)年度から実施します。これは、国内外の多様な受験者に開かれた年2回(4月・9月)の制度で、その仕組みづくりに万全を期したいと思います。

江藤 本学では、キリスト教、社会福祉学、臨床心理学の三つの学科を置いてきましたが、平成26(2014)年の春に1学部1学科にして学科の壁を取り払い、専門性を保ちつつ学生の関心に応じて学ぶ分野を柔軟に広げられるようにしました。それから3年目となる今年は、1学科制の利点をさらに発揮していきたいですね。また、小規模校ならではの徹底した少人数教育を生かして、社会に貢献できる人を育てていける教育システムをさらに追求したいと考えています。

跡見 今年はやはり、井の頭キャンパスへの移転が一番大きな事業になります。また、1年生を対象に金曜日を共通の学びの日として、各学部の「教員推奨科目」をお互いに共有できる環境が生まれるため、4学部が連携・融合することの成果に期待したいですね。また、少子化を踏まえて「高・大接続」、つまり高校との連携を強化したいと考えています。たとえば、近隣の高校生が大学で学んだことが単位になるような仕組みを、近隣の大学とも協力しながら検討していきたいと思います。

市長 ありがとうございます。市としての抱負も述べさせていただきますと、三鷹市では現在、急速に進む少子長寿化の中で、コミュニティ・スクールを基盤とした小・中一貫教育や、安心して子どもを産み育てていける仕組みを地域型のプロジェクトとして進めています。また、ご高齢の皆様が安心して生活できるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する地域包括ケアシステムの構築も進めています。こうした取り組みの新たな拠点となるのが、来年4月に市役所東側にオープンする「新川防災公園・多機能複合施設(仮称)」です。ここには、防災センターのほか、総合スポーツセンター、生涯学習センター、福祉センター、子ども発達支援センター、総合保健センターが集約されますが、大切なのは、この複合施設を幅広い層の市民の皆様にどのように利活用していただくかということです。ぜひ大学のみなさんのお知恵も拝借したいですし、大学の教育活動やボランティア活動の場としても、この施設を大いに使っていただければと思います。

大学の知的資源をあらゆる世代の市民のために
市長 さて最後に、みなさんから三鷹市や市民の皆様に対するご期待や、市と共に取り組んでいかれたいことについて伺いたいと思います。

跡見 地域のみなさんが生きがいを持って健康で長生きしていただくために、本学では今後もさまざまな機会を提供していくつもりですが、昨今は「防災」も重要なテーマと捉えています。特に災害弱者といわれる、高齢者や障がいのある方、外国人の方とのコミュニケーションに関する課題について、市や市民のみなさんと一緒に取り組んでいきたいと思います。また、一般市民を対象とした本学の「生きがいづくりコーディネーター養成講座」などで学ばれた方々が、市内で積極的に活躍していただけるとありがたいですね。

日比谷 本学が開講している各種の講座に、ぜひ参加していただきたいですね。市民のみなさんの豊かな社会経験が、学生への大きな刺激になると思います。また、昨夏からスタートした「キッズ・カレッジ」という新たな試みでは、小学4年生から中学3年生を対象にキャンパス内で本学教員による講義を体験してもらっています。こうした取り組みを通じての小さな子どもたちとの連携も、これからは大切だと考えています。

江藤 子どもたちとのつながりは本学でも重視していて、高校はもちろん、中学校、さらにはもっと下の世代へとつながりを広げていきたいと思っています。近くの保育園の園児たちがキャンパス内で定期的に学生と交流していますが、このようなプログラムを今後も継続することで、子どもたちに将来の進路の一つとして大学を身近に感じてもらえたらと思っています。

市長 幼児や小学生を含めて、幅広い年齢の子どもたちのキャリアデザインに「大学」が自然に入ってくるのは、とても素晴らしいことだと思います。また、大学で学ばれた市民の皆様には、ぜひ生涯学習センターや子ども発達支援センターなど、市の新しい施設で活躍してほしいですね。三つの大学の人財と知的資源は、三鷹市のまちづくりにとって不可欠なものです。今後も大学との密接な関係を築かせていただき、「民学産公の協働」による地域課題の解決に取り組むことで、今まで以上に「誰もがいきいきと輝くまち三鷹」の実現を目指していきたいと思います。本日はありがとうございました。


※詳細はPDFをご覧ください。


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