緑と水の公園都市 三鷹市
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広報みたか2005年1月1日4・5面

■新春対談・舟崎克彦さん(絵本・童話作家)&清原慶子市長

親子が共に絵本を見ることは、一緒に旅をしていることと同じなんです。―舟崎克彦
「はじめての絵本」、そして「絵本館」。三鷹市を絵本文化がはぐくまれ、発信するまちに。―清原市長

絵本・童話作家として、
 長年にわたって第一線で活躍する
  牟礼在住の舟崎克彦さん。
そして、絵本好きを自認する清原慶子市長。
新年を迎えるにあたり、
 行われた対談の話題は、
  絵本の魅力や創作について、
   さらに「はじめての絵本(ブックスタート)」
    事業や、「絵本館」構想など、
     さまざまに広がりました。

【写真キャプション】※写真はPDFファイルをご参照ください。

絵を描き、生き物にふれて育った、子ども時代

清原 舟崎さんは、文章だけでなく、本によっては絵まで描かれます。また、芸術性の高いものから、アカデミックなもの、さらにおなかを抱えて笑うようなナンセンスものまで、内容のジャンルも幅広いですよね。とても多才でいらっしゃいますが、お子さんの頃から表現することがお好きだったんですか?
舟崎 子どもの頃から、表現欲が旺盛で、絵ばかり描いていたんです。授業中も、教科書の隅は落書きばかり。先生が来るとパッと手で隠したりして。ディズニーのキャラクターや図鑑の鳥の絵なんかをよく模写していました。
清原 舟崎さんの作品を拝見していると、動物がよく出てくるんですが、生き物の習性だとか生態については、特別に勉強されたんですか?
舟崎 僕は、生まれたのが池袋なんですが、当時はまだ自然もたくさん残っていて、千川上水にはホタルが舞っていましたし、うちの庭ではフクロウが啼いていました。そんなところから、いつの間にか生き物についての興味が芽生えて、次第に専門書を読むようになっていました。
清原 ご自分の目で見たものがベースになっているんですね。舟崎さんの作品では、理屈っぽく教えるんじゃなくて、自然なやりとりの中から、ああ動物や虫ってこうなっているんだ、こうしているんだって自然にわかるようになっていますよね。
舟崎 子どもの本の中では、動物も人間も対等ですから。人間だけが特殊な存在なわけではなくて、ゲジゲジもカモノハシもオランウータンもみんなぼくらと同じ資格で”共生“しているわけです。幸せになる権利を持っている。そんなメッセージを込めているつもりですので、高みからレクチャーするような文体にならないんでしょうね。
清原 なるほど。一緒に共生している仲間ってことですね。それは素晴らしいお考えですね。

絵本は、想像力と創造力を高めてくれるもの

清原 私は、舟崎さんの作品の中でも『なんでもはかせのなんでもパンツ』っていう本が大好きで、本当におかしくて何度読んでも笑い転げちゃうんです。この中で、パンツが、大人になることやモラルを身につけることの象徴になっているようなところがありますよね。最後の場面は、「パンツが大事なのはわかるけど、でもはきたくな〜い!」っていう、子どもの素直な気持ちを表しているように思いました。
舟崎 僕は、落ちこぼれだったんですよ。学校があまり好きじゃなくて。束縛されるのが嫌いだったんですね。でも、大人になっていくにしたがって、いろいろな縛りがかけられていく。いわば、どんどんパンツを重ね着させられていくわけですよね(笑)。そうなってくると、生(き)のままの感性が失われていく怖さがあるんです。
清原 それはあるかもしれませんね。もちろん、人間どうしが”共生“ する場合は、自分を抑えていくことも必要ではあるんですが。
舟崎 ええ。ルールやモラルを守ることは大切なんですけれども、オリジナルな感性まで抑え込んでしまうのは、自己否定につながると思うんです。せめて本の世界の中でだけは「すっぽんぽん」でありたい(笑)。
清原 それに、絵本は想像力と創造力を刺激してくれるでしょう。テレビやインターネットと違いますから、登場人物の動きや声を想像したり、その世界観を心の中で広げることができます。
舟崎 アナログである絵本の良さは、手に取って自分のペースで読むことができるところです。映像は我々を待っていてくれませんし、登場人物の声音やBGMを押しつけてきます。本はそういったものを、すべて自分の頭の中で具象化しなくてはなりません。まどろっこしいようですが、そういう頭脳訓練が愉しみながら想像力と創造力を高めてくれるんですね。

都市と自然が共存する三鷹が好き

清原 舟崎さんが三鷹市にお住まいでいらっしゃることは、市長としても私個人としても大変うれしいことなんですけれど、三鷹にどんな印象をお持ちですか?
舟崎 僕は牟礼二丁目なんですが、すぐそばに大きな梅林があるんです。そこから下りていったところが玉川上水。20年ほど前に吉祥寺から移ってきましたが、ちょっとした空地にもスミレが一面に咲いていて感激しました。野鳥の種類が多いことにも驚嘆しました。カワセミをはじめとして、アオゲラ、シメ、シロハラ、ルリビタキ…みんな三鷹に来て初めて出会った鳥たちです。また、木々の緑越しに繁華街のビルのネオンが見えるっていう、その違和感も素晴らしい(笑)。東京にいながら自然に一番ふれあえたのが三鷹ですね。でも、僕は所詮”まちっ子“ なんで、近くににぎわいもないと寂しいんです。
清原 やっぱりネオンも見えてくれないと困るわけですね(笑)。たしかに三鷹は、都市と自然が共存しているのが大きな特色です。舟崎さんには、まさにぴったりなまちかもしれませんね。
【写真キャプション】※写真はPDFファイルをご参照ください。

「はじめての絵本」は親子へのすてきな贈り物

清原 三鷹市では、平成15年度から「はじめての絵本(ブックスタート)事業」を始めています。これは、3〜4カ月児健診の会場で、赤ちゃんと保護者の方に、2冊の絵本のうちからお好きな1冊を選んでもらってプレゼントするものです。「はじめての絵本」は、「子どもが生まれて初めて出会う本」であり、「親子で一緒に初めて出会う本」の機会を提供しようとするものです。まだまだ工夫の余地はありますが、うれしいことにこの事業をスタートさせてから図書館の利用者が増えて、しかも絵本の貸し出しが多くなっているそうなんです。私は、絵本というのは、親子のコミュニケーションを深めるためにぴったりのものだと思うんですよ。
舟崎 そうですね。親子で世界を共有するってことは、大切だと思います。僕は、本を読む行為というのは、一種の旅だと思っているんです。忙しかったりして実際の旅に出かけられない人でも、本を読むことで、いろいろなところへ出かけて、さまざまな体験ができる。親子が一緒に絵本を見るってことは、そのひととき共に人生経験を積んでいるのと同じことです。
清原 なるほど。わが家でも、子どもがまだ小さい頃、私は仕事をしていたため昼間は子どもと一緒にいられなかったので、夜はできるだけ本を読んで聞かせてあげました。昼間一緒にいられなかったとしても、夜、一緒に本を読むことでその空白を埋めてあげられる。そんな魔法を、本は持っているように思います。
舟崎 子どもの本は時に、この世に不可能はない、と囁きかけてくれます。ま、実人生はそんなにうまくは行きませんが、少なくとも不可能を可能にする勇気を与えることはできる。夢を持つ、っていうのは、そういうことじゃないでしょうか。その呼びかけを自分のお母さん、お父さんの声で聞かせてもらうってことはとても大事だと思いますね。

作家として注目したい市の「絵本館」構想

清原 私は、市長に就任する以前から、三鷹市に「絵本館」をつくりたいという構想を抱いていて、いま、その実現に向けて検討を重ねているんです。なぜ、絵本館なのか、というと、学生時代に私は、地域・家庭文庫のボランティア活動をしている市民の皆さんと出会い、そのお手伝いをする機会があったんです。ボランティアのみなさんは、自分のお子さんはかなり成長されている場合でも、地域の子どもたちのために絵本とずっとかかわろうとされていたんです。そのときに、絵本は大人をも魅きつけるものだと実感しました。また、先ほども「絵本で親子が一緒に旅をする」というすてきなお話がありましたが、子どもと大人のふれあいや理解の場として、図書館、地域文庫・家庭文庫に加えて、絵本を中心とした新たな場が今こそ大切になると思います。
舟崎 それは素晴らしいアイデアですね。僕以外にも三鷹には神沢利子さん、まついのりこさん、CG絵本の荒木慎司さん―数年前まではスズキコージさんや片山健さんも長い間、三鷹市民でした-など絵本作家にゆかりがありますし、出版関係者も少なくありません。児童書への市民の関心度も高いまちですから、絵本館っていうのは地域文化に合ったとてもいいお考えだと思います。絵本作家の一人として注目していきたいですね。
清原 舟崎さんに応援していただけると、とても心強いです。舟崎さんをはじめ多数の絵本作家の方がいらっしゃることをうかがって、絵本と出会いやすい、絵本文化発信の場所として、三鷹市はふさわしいのではないかなと、自信を深めました。
舟崎 三鷹市の新しい文化の誕生に立ち合える日を楽しみにしています。それにしても市長がこれほど絵本に造詣が深くていらっしゃるとは驚きでした。ぜひ、今後は絵本作家にも挑戦してください。
清原 いや、それは遠慮しておきます(笑)。でも、絵本の持つ力と可能性を市民のみなさんとご一緒に三鷹市のまちづくりに生かしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。本日は、どうもありがとうございました。

舟崎克彦さん
Yoshihiko Funazaki
1945年、東京都生まれ。作家・イラストレーター。学習院大学在学中より詩作を始め、卒業後、レコードの作詞、ラジオDJのシナリオ執筆等を経て「トンカチと花将軍」(共著)で児童文学界に入る。その後、ファンタジー、ナンセンス系列の絵本・童話作品を中心に約400点の著作を手がける。「雨の動物園」で国際アンデルセン賞優良作品賞、「あのこがみえる」(絵・味戸ケイコ)でボローニャ国際児童図書展グラフィック賞、「かぜひきたまご」(絵・杉浦範茂)でサンケイ児童出版文化賞、「ぽっぺん先生」物語で赤い鳥文学賞、路傍の石文学賞等を受賞。その他の作品に「ピカソ君の探偵ノート」シリーズ、「日本の神話」シリーズ(絵・赤羽末吉)、「あいしてる」(絵・岡本太郎)、「モンスター学園」シリーズなど。また評論集、小説集、翻訳、詩のアンソロジーなども。現在、白百合女子大学児童文化学科助教授として文章表現、絵本・童話の創作を教える。日本文芸家協会会員。
【写真キャプション】舟崎克彦さん ※写真はPDFファイルをご参照ください。

清原慶子市長
Keiko Kiyohara
1951年、東京都生まれ。慶應義塾大学、同大学院で学んだ後、ルーテル学院大学文学部助教授・教授、東京工科大学メディア学部教授・学部長等を経て、2003年4月から三鷹市長。
【写真キャプション】 ※写真はPDFファイルをご参照ください。

清原市長も大ファン!
『なんでもはかせのなんでもパンツ』
舟崎克彦(文)、長 新太(絵)のコンビによる絵本。世の中の何にでもパンツをはかせてしまう“なんでもはかせ”が、太陽や月にまでパンツをはかせようと宇宙へ。しかし、自分のパンツをなくしてしまう……。深〜い意味があるような、ないような、不思議なおかしさに満ちた作品です。【本に」ジャケット】※本のジャケットはPDFファイルをご参照ください。

はじめての絵本事業
 平成15年8月から始まった「はじめての絵本(ブックスタート)事業」。絵本を通して赤ちゃんと楽しい時間をもち、親子のコミュニケーションを深めるきっかけを提供することを目的としています。
 3〜4カ月児健診の会場(総合保健センター)で、健診を受診する赤ちゃんと保護者の方におすすめの絵本の紹介などをしながら、ブックスタートパックをお渡ししています。パックの内容は現在、絵本「いないいないばあ」(松谷みよ子/文 瀬川康男/画 童心社)または「がたんごとんがたんごとん」(安西水丸/作 福音館書店)のいずれか1冊、赤ちゃん向けブックリスト(0〜3歳のお子さん向け絵本12冊を紹介)、市立図書館の利用案内など。
 →図書館TEL43-9151
【写真キャプション】※写真はPDFファイルをご参照ください。

「絵本館(仮称)」の整備構想
 市では現在、「絵本館(仮称)」の整備に向けた検討を進めています。
 昨年は、市民のみなさんを対象に、絵本館整備に向けたアンケート調査や、関係団体、市内の絵本作家のみなさんへの聞き取り調査などを行い、調査研究を行ってきました。
 絵本館は、子どもから大人までが絵本の魅力に出会い、絵本をとおして親子がふれあうことのできる場として構想されています。日本の絵本文化の中心を担う多くの作家や画家が住み、市民による地域・家庭文庫活動の長い伝統のある三鷹市ならではの絵本文化の発信が期待されます。
 今後、市としての基本的な考え方をまとめて公表し、来年度の早い時期に、市民のみなさんのご意見をお伺いする予定です。
 →コミュニティ文化室TEL内線2516

三鷹ゆかりの絵本・童話作家による絵本・児童書
「日本少国民文庫 世界名作選」山本 有三/編 新潮社
「とっとことっとこ」まついのりこ/作 童心社
「まりーちゃんとひつじ」 フランソワーズ/文・絵 与田準一/訳 岩波書店
「きかいがしまむかし」 与田準一/文 村上勉/絵 フレーベル館
「ちずあそび」 吉村証子/著 帆足次郎/絵 岩崎書店
「ちいちゃんのさんぽ」 清水道尾/作 ほるぷ出版
「くまの子ウーフ」 神沢利子/作 井上洋介/絵 ポプラ社
「鹿よ おれの兄弟よ」 神沢利子 /作 G・D・パヴリーシン/ 絵 福音館書店
「くるまでおでかけ」 高木あきこ/作 田頭よしたか/絵 ひさかたチャイルド 
「ふたりがいいね」 渡辺あきお/作 佼成出版社
「いいことってどんなこと」 神沢利子/作 片山健/絵 福音館書店
「源平絵巻物語第一巻 牛若丸 」 赤羽末吉/絵 今西祐行/文 偕成社
「おばけドライブ」 スズキコージ/作 ビリケン出版
「ファンファン・ファーマシィー」 柏葉幸子/作 荒木慎司/絵 小学館
「肥後の石工」 今西祐行/作 岩波書店
「かいじんハテナ?」 舟崎克彦/作 スズキコージ/絵 小学館

【本表紙キャプション】※写真はPDFファイルをご参照ください。


※詳細はPDFをご覧ください。


【主】主催者 【人】対象・定員 【日】日時・期間 【所】場所・会場 【¥】費用(記載のないものは無料) 【物】持ち物 【申】申込方法 【問】問い合わせ 【保】保育あり

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