イノカシラフラスコモが井の頭池周辺で発見されたのは昭和32(1957)年とされています。
発見地にちなんでイノカシラの名前が付けられた在来の水草で、「井の頭」を冠した唯一の生物ともいわれています。
かつて、井の頭池は70種以上もの水草を育んでいたそうです。しかし、1960年代以降、湧水の減少に伴う水質の悪化と外来魚の増加などにより、イノカシラフラスコモを含む多くの在来の水草は井の頭池から消滅してしまいました。イノカシラフラスコモは現在、環境省レッドリストで絶滅のおそれが最も高い「絶滅危惧1類」に指定されています。
イノカシラフラスコモは、日本において4属約80種類が確認されている車軸藻類(シャジクモ目)であり、藻の仲間です。全体の長さは約20〜30センチメートルで、主軸の直径は0.5〜0.7ミリメートルととても細く、雄株と雌株に分かれていることなどが特徴です。車軸藻類は、池の水底を覆うように繁茂し、透明な水を維持するために大切な働きをしていると考えられていますが、埋め立てや水質の悪化により多くの種が住む場所を失い、そのほとんどが環境省レッドリストに掲載されるなど、危機的現状を抱えている植物です。
長い間、在来の水草が確認できなかった井の頭池でしたが、平成25年度に行った最初のかいぼりの後から少しずつ在来の水草が再生を始めます。
そして、平成27年度に行った2度目のかいぼりの後、池底の土壌の中で長い眠りについていたイノカシラシラフラスコモの胞子がついに目覚め、約60年ぶりに待望の復活を遂げたのです。
活動に参加するボランティアや関係者のみなさんも、まさかの復活に驚嘆したといいます。かいぼりで池底を天日干ししたことや、水草の生育に影響を及ぼす外来種を駆除した効果が大きかったと考えられています。
井の頭池では、イノカシラフラスコモ以外にも、絶滅危惧種であるツツイトモがボート池を中心に広い範囲で群落を形成するなど、多様な水草の再生が期待されています。
野外ステージ前のかいぼり情報発信基地「かいぼり屋」では、この「幻の水草」を水槽で展示しています。
梅林(弁財天から吉祥寺通りに向かう上り坂の斜面)の梅も少しずつ咲き始めた井の頭恩賜公園にお越しの際は、ぜひイノカシラフラスコモもご覧ください。
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